既存オーディオの音に「波を重ねる」という新しい発想
最近、イベントでデモカーを試聴してみて「これイケてるじゃん」と思ったのが、「レイヤードサウンド」だ。約10cm程度の手のひらサイズの「サウンド・ドライバ」というユニットをAピラーや天井の内部に装着し、これまたコンパクトなアンプユニットを加えるだけ。サウンド・ドライバは内張りを振動させてD波という反響を生み出し、元々の純正システムから出るC波と重ね合わせることで、自然な臨場感を生み出すのだ。
手のひらサイズのデバイスをAピラーや天井の内部に埋めるだけ
純正オーディオを入れ替えたり、スピーカーを交換したりの手間は一切なく、純正システムに加えるだけだから、施工は比較的簡単。内張りの中にサウンド・ドライバをセットしてしまえば、インテリアも純正そのままだ。デモカーだから、今回は見えやすいように、アンプユニットを助手席の足元に設置していたが、これも隠しておける。従来のハイエンド・カーオーディオのように、これ見よがしにスピーカーが付いていたり、加工の跡が見られたりしないのも魅力のひとつだ。
それでいて音は大きく変わる。デモカーはメルセデス・ベンツ「CLA180」で、Aピラーの左右に2カ所、リアシートの天井の左右に2カ所、計4カ所にサウンド・ドライバを埋め込み、ラゲッジルームにはオプションの「+C」というパワードサブウーファーを設置していたのだが、グローブボックス内に隠して設置したスイッチをオンに切り替えると、とたんに音が生き生きとして臨場感が高まる。
Hi-Fiではないが全ての席で臨場感が高まる
とくに効果を感じたのが、リアシートでの臨場感アップ。CLA180のようなクルマだと、リアシートにも人を乗せて大勢で出かけることも多いだろうが、そんなドライブでもおそらく不満を感じないだろう。
また音楽だけではなくテレビやラジオの音にも効く。たとえば野球中継なんかは効果が分かりやすく、いったんオンの状態からオフにすると、音がしょぼくて聴くのがイヤになるほど。声がはっきりするとともに、会場のザワつきもくっきりと聞こえてくるので臨場感が格段に高まる。
けっしてHi-Fiなサウンドではないのだが、大がかりな加工が不要な作業で、全ての席で臨場感が高まるのはうれしい。ハイエンド・カーオーディオの場合、どうしても視聴位置が運転席なり助手席なり、ある1カ所に限定されてしまうのだが、全席で快適な音が楽しめるのは、ある意味画期的だ。
後付けでどんなクルマにも装着可能
ということで、メルセデス・ベンツでは2023年3月から新型「GLCクラス」に純正アクセサリーとしてオプション設定している。オプション設定されたのはサウンド・ドライバが2個とパワーアンプがセットになった2チャンネルセットで、標準オーディオ装備の仕様だけではなく、Burmester(ブルメスター)サラウンドサウンドシステム装備のクルマにも装着できる。
もちろん、後付けでどんなクルマにも装着可能で、2チャンネルセットの「LST-AD3-01」は18万7000円(消費税込)。サウンド・ドライバが4個に増えた4チャンネルセットの「LST-AD3-02」が29万7000円(消費税込)。4チャンネルセットにサブウーファを加えた限定パックの4チャンネル+Cセット、「LST-AD3-03」は34万6500円(消費税込)となる。ほとんどリアシートには人が乗らないクーペタイプのクルマなら2チャンネルセットで十分だろうし、ワゴン等のリアシートにも人を乗せる機会が多いクルマなら4チャンネルセット、もしくは4チャンネル+Cセットという具合にクルマに応じて選べばよいだろう。
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何度も言うようだが、決してHi-Fiではない。しかし、臨場感あふれるリアルなサウンドは本物で、ピアニストでもあるシェリー・カッツ博士が開発しただけのことはある。最新の「3rd edition」は元マクラーレン・オートモーティブのエンジニアが基本設計を行い、数多くの欧州高級オーディオの開発で実績のある企業と共同開発した製品だけあって、高いクオリティに仕上がっている。