最新技術で愛車を進化! 夜の公道の慣らしドライブもまた楽しみ
長らく日産「R34 GT-R」に乗ってきた三輪英則さんはナンバー付きにこだわる。これまでもエンジンチューンを施して、そのたびに夜な夜な公道で慣らし運転をしてきた。もちろん、GTウイングは外してタイヤも街乗り用に交換。住んでいるのは札幌市で、法定速度以下で北海道らしく高速道路や国道をゆったりと流してきた。メインで走るのは十勝スピードウェイで、そのときは積載車で往復しているが、夜ごとの慣らしドライブがオーナーの楽しみなのだ。
エンジンをリフレッシュしMoTeCで960馬力を実現
「気持ちよく夜の高速道路で慣らしをするのはいいのですが、北海道の問題は夜にガソリンスタンドが閉まっちゃうんですよね。以前のエンジンのとき、そろそろ給油しようかなと思ったら行くスタンドみんな閉まってて、冷や汗をかきつつ長万部から戻ってきたのも良い思い出です」
とオーナーの三輪さん。以前のエンジンがタービンブローをしたのを機にリフレッシュに踏み切った。エンジンはブライアンクロワーの2.9L仕様にしてタービンも最新のギャレットG35-900を装着。エキマニはアルトラック社に特注で製作してもらった等長タイプとすることで、タービンピックアップの良さを実現している。制御もこれまでのF-CON V ProからMoTeC M1に一新した。
車両製作を行う札幌のチューニングショップ「クルーズ」の吉川大志郎マネージャーはこう語る。
「MoTeCにすることで制御が緻密になることもありますが最大の魅力は拡張性です。フラットシフトでもローンチスタートでも何でもできちゃうので、今後はホリンジャーのシーケンシャルにしてパドルシフトにして、なんてことも可能です」
今回はエンジン+タービンを一新してトランスミッションなどはノーマルゲトラグを使用。MoTeCでしっかりとセッティングすることでパワーはローラー式換算で驚異の960ps、トルクは105kgmを出している。
十勝スピードウェイでシェイクダウン、プロの意見は?
1000ps近いパワーを手に入れたR34は、さっそく十勝スピードウェイ・ジュニアコースの走行会で走行デビューとなった。オーナーは驚きのパワーにカラダが慣れないと周回を重ねる。そこでクルーズ走行会のゲストドライバーだった木下みつひろプロが試乗した。
「これだけパワーがあるとリアのアクティブLSDがちょっと足りないですね。できれば機械式にしてしっかりと効かせたほうがトラクションが得られて前に進めることができます。オススメはなめらかに効くATSカーボンLSDですが」
と自らセッティングしたパーツをオススメ。さらにこうアドバイスしてくれた。
「あとはリアのリバウンド側の減衰力がちょっと強い。サスが伸びてくるのに時間がかかるので、ちょっとそこは調整したいところ。しっかりとトラクションがあって、足が良くなればもっとパワーを出しても受け止められますね」
リアデフを機械式へ……ならいっそホリンジャーのシーケンシャルも?
オーナーの三輪さんはさっそく機械式デフの装着を考え始める。しかし、クルーズの吉川マネージャーからはなかなか厳しい指摘が。
「リアを機械式にするってことは機械式のグレードのリアデフキャリアがないと付かないんですが、これがまたそうそう落ちてないわけですよ。純正部品ももちろん出ませんし。そこを探すところからですね」
現役バリバリとはいえ、20年以上経過しているR34の痛いところでもある。さらに吉川マネージャーが
「デフケースが変わるってことはファイナルギアとピニオンギアも変えなくちゃいけないので、そこも探さないといけません。でも、もしこの先ホリンジャーのシーケンシャルミッションにするとしたら、そのときにまた違ったギア比のファイナルギアとピニオンギアが要るわけです。そうなると二度手間でお客さまの金銭的負担も大きくなってしまいますので……。もうホリンジャーにしちゃいましょうか!」
と言うとオーナーは必死で止める。
「やめろーやめろー、たしかにそうだけどいきなり行くなって。エンジン出来たとこなんだから……」(三輪オーナー)
「でも、リアデフ強くしたいんでしょ」(吉川マネージャー)
「う、うん」(三輪オーナー)
次なるステップへの進化は冬の間にコツコツと
こうして夏は過ぎていく。しかし、北海道の夏は短い。8月の十勝夏祭りが最大のイベントで、そこからお盆をすぎるともう暑さは和らぎ、冬に向かって進んでいく。気温の低いアタックチャンスを狙うのは10月までで、11月となれば厳しい。
となると、シーケンシャルシフト+パドルシフト化はおろか、リアデフの機械式化も今シーズンに間に合うかは微妙なところだが、冬の間にコツコツとクルマを進化させ、春から慣らして夏に成果を出すのが北海道ならではのチューニングカーライフの楽しみ方なのである。