ハンドリングがシャープになる
クルマ好きにとって、カーボン、チタン、アルミ削り出しといったマテリアルは特別な魅力がある。とくに軽くて強度が高いカーボンは、エアロパーツの素材としても人気がある。チューニングカーの場合、外装パーツのなかでもとくに大きく目立ちやすいボンネットをカーボン製に交換する場合があるが、カーボンボンネットにはどんなメリットがあるのだろうか。
軽量化により運動性能が向上
最大のメリットは軽量化。例えばトヨタ「GR86」の純正ボンネットはアルミ製で、重量は8.6kg。それがカーボンボンネットになると純正形状でも3〜4kgも軽くなる。純正ボンネットの材質がスチールのクルマであれば、カーボンボンネットによる軽量化はより効果的といえる。日産「シルビア」クラスのスチールボンネットはおよそ18kgだが、それをカーボンボンネットに交換すると、約50%は軽くなる。
ボンネットが軽くなると、フロントまわりの重量が軽減するので、旋回時のヨー慣性モーメントが小さくなる。より小さな力でヨーが発生し、より小さな力でヨーが収束するので、ハンドリングがシャープになるのがひとつのメリットだ。
またボンネットはエンジンルームの上にあるので、ボンネットが軽くなると、重心も若干下がり、ロールモーメントも小さくできる。もちろん軽量化による加速性能、制動性能、燃費性能への好影響もあるだろう。運動性能以外では、NACAダクトやエアアウトレットをつけることで、クーリング性能の向上も考えられる。
デメリットもいくつかある
もうひとつはドレスアップパーツとしての見た目の良さ。面積の広い=目立ちやすいボンネットが、カーボン地になることでカッコ良さと高級感が増し、オーナーによっては高い満足感が得られるはず。ただし、実際のパフォーマンスへの影響については、カーボンボンネット単品ではそれほど期待できない。
軽量化によるタイムアップは、F1マシンのフューエルエフェクト(燃料搭載量がラップタイムに与える影響を数値化したもの)でも、10kgあたり平均で0.3秒ぐらい。1300kgクラスの量産車が、4kgぐらい軽くなったとしても、サーキットでのラップタイムは、筑波サーキットあたりでもコンマ1秒も変わらないかもしれない……(ハンドリング向上分の影響や、タイヤの摩耗への影響はプラス要素)。
また燃費に関しては、車重が100kg軽くなると燃費が3%ぐらい向上すると言われているので、やはり3〜4kg程度では誤差の範囲でしか変わらない可能性がある。
ドライカーボンのボンネットは、1枚30万円~と非常に高価で、しかもクラッシュ時の潰れ方が検証されていないものがあったり、リサイクルに不向きだったり、固定にボンネットピンが必要なものもあったりと、デメリットもいくつか散見される。
一方で軽量化は細かいことの積み重ねであったり、ドレスアップにはとても有効だったりするので、ボンネットのカーボン化については、長所と短所をよく考えて判断するようにしよう。