チューニング内容を考えればお買い得な1台でした
2010年に登場したホンダのハイブリッドカーである「CR-Z」は、その名前からも分かるように往年のホットハッチ、「CR-X」のイメージを踏襲したスタイルが最大の特徴だ。低く構えたワイド&ローなスタイルや、スパッと切り落とされたリアセクションなど、スポーツ度満点のエクステリアを持っていた。
300台限定でリリースされた
またトランスミッションにはハイブリッド車としては世界初となる3ペダルの6速MTが用意されていた(CVTもあり)。スポーティな走りが楽しめるハイブリッド車としても話題を集めたのだった。しかし、CR-X時代に搭載されていた高回転型のDOHC VTECエンジンに比べると、いくらモーターでアシストしているとはいえ114psの1.5L SOHCエンジンは、100kg以上重たくなった車重も相まってやや物足りない印象だったのもまた事実。
そこでホンダはマイナーチェンジのタイミングでバッテリーをリチウムイオンに換装し、電圧を高めたことでモーター出力を向上。さらに力強い加速を瞬時に実現できるPLUS SPORTシステムも採用してスポーツ度を向上させている。そんな後期型CR-Zをベースとして無限が手掛けたコンプリートカーが、300台限定でリリースされた「CR-Z MUGEN RZ」である。
痛快な加速を楽しむことができた
このモデルの最大のトピックはその心臓部であるエンジンで、なんと遠心式スーパーチャージャーとインタークーラー、専用ECUと吸排気系の組み合わせで、ベース車の約30%増しとなる156psを発生。モーター出力がアップした後期型のハイブリッドシステムも相まって痛快な加速を楽しむことができるモデルに変貌していたのだ。
もちろん高出力化に合わせて大容量のインジェクターや専用のラジエター、スーパーチャージャーユニット用のオイルクーラーなども追加。足まわりには5段階の減衰力調整式サスペンションや鍛造アルミホイール、ブレーキまわりもスリット入り大径フロントディスクローター&キャリパー、ミクロメッシュブレーキラインなど抜かりなく強化している。
エクステリアもエアロパーツで武装されているが、見た目だけでなく、なんと前後マイナスリフトバランスを達成した本格的な空力性能を併せ持ったものとなっていた。インテリアもブルーの外装に合わせてブルーでコーディネイトされるなど、さすがは無限のコンプリートカーといった仕上がりだった。
ただ、それだけに価格は当時449万4000円(消費税込)と、αグレードと比較して200万円近く高いプライスとなっていた。チューニング内容を考えればそれでもお買い得なプライスではあったが、販売面では苦戦を強いられたようで、300台限定ながら登場から数年経ってからようやく登録されたような個体も散見された(つまり販売面では成功したとは言い難い1台であった)。