速度やGに加えて「ジャーク」を導入した最新のサスペンション制御とは
パーツメーカーやスペシャルショップが、自慢のアイテムや技術を惜しみなく投入しているのが「デモカー」。それぞれどんなコダワリを投入しているのか、そして実際のところ、純正スペックと比べて何がどう変わっているのか? チューニングライター加茂 新が試乗してレポート。今回は、TEINの電動リモート減衰力コントローラーの最新版「EDFC5」を検証する。
TEINが20年にわたり進化させてきたEDFCが第5世代にシフト
メイド・イン・ジャパンにこだわるサスペンション専門メーカーTEIN(テイン)。サファリラリーで日本人唯一の優勝経験をもつ藤本吉郎氏が中心となって興した日本のメーカーだ。オリジナルサスペンションは入門モデルから競技用のハイスペックモデルまでラインナップしているが、いま人気を集めているのは「EDFC5」だ。
EDFC(Electronic Damping Force Controller)は遠隔で減衰力を調整できるシステム。当初は室内から前後の減衰力をそれぞれ調整できる便利な機能が売りで、走行中に減衰力を変更できることが魅力だった。
ところが途中からGや速度に応じた自動制御機能が搭載。基本的に普段は減衰力をソフトにしておきながら、ブレーキングしたらフロントサスの減衰力を瞬時に高めるなど、クルマの動きをできるだけフラットにできる、いわばアクティブサスペンション的な機能が魅力となった。
そして2023年1月に第5世代のEDFC5に進化。そこで新たに搭載されたのが「ジャーク制御」だ。
挙動変化にともなうGの変化量に感応してコントロール
「これはGの変化量を事前に検出することで、車両がこれからどのような動きをするのかを予測して、曲がり始める瞬間や、加速や減速の始まりのタイミングで減衰力の自動調整を可能にしています」
とTEINの担当者は説明する。
ざっくりと説明すると、これまでのEDFCだと前後左右のGに従って減衰力を強めることができた。それによって、まっすぐの巡航時はソフトに、コーナリング時はしっかりとした乗り心地にすることができた。
しかし、回り込んだコーナーなど横Gが長くかかる状況だと、横Gが掛かっている間はずっと減衰力が高く、それによって乗り心地がハードだったり、路面のギャップなどに対して減衰力が高すぎることもあった。
ジャーク制御では、横Gが掛かったときに減衰力を高めるのは同じだが、強い横Gが発生していても、その横Gに変化がなければ減衰力を弱めることができる。つまり曲がり始めのロールしていく途中だけ減衰力を高め、ロールが落ち着いたら減衰力を弱める制御が可能になった。それにより荒れた路面でもよりタイヤを路面に追従させることができるようになり、快適性も高めつつコーナリング中の路面をより掴めるようになったのだ。