今となっても、イタリアンクラシックの入門篇
伝説のスポーツクーペとはいえ、基本は実用性も追求した4座クーペであることから、アルファ・ツインカムは低速域から扱いやすい。ただしエンジンの回転が高まり、サウンドが「フォーンッ!」という澄んだものとなってきたあたりからトルクも乗ってきて、今や死語となりつつある「カムに乗る」体験ができる。
だから同じ「テンロク」DOHCであっても、たとえばロータス・ツインカムなどよりも明らかに煽情的なフィーリング。筆者の拙い経験の中で洋の東西、あるいは時代を問わず、これほど官能的な4気筒エンジンはほとんどないと確信している。そしてこのエンジンこそが、かつて世界中のクルマ好きを魅了した走りの世界観をもたらしてくれるかに思われるのだ。
一方シャシーについては、スポーツカーというよりは小型のグラントゥリズモというキャラに沿って乗り心地も悪くないのだが、それと引き換えに深いロールを伴う、クラシック・アルファ愛好家にはおなじみのコーナーリングスタイルとなる。
また、ウォーム&セクター式のステアリングは低速域でやや重く、クイックさでもラック&ピニオン式には少々劣る。したがって敏捷なスポーツカーというよりは、やはりGTの王道を行くモデルだったといえるだろう。
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つい10年ほど前までは「段つき」に比べてかなりリーズナブルに入手できた「フラットノーズ」だが、近年のクラシックカー市場高騰の影響を受け、かなり高価なものとなってしまったのは事実。以前のように「本格的イタリアンクラシック入門篇」とは、安易に言えなくなったようだ。
でも4年間アシ車として愛用した筆者自身の経験からも、ジュリア系クーペはひとたびキッチリと仕上げたなら、信頼性も充分にある。現在の市況にあってでも覚悟を決められる方々には、今なお入門篇としても好適なモデルと断じてしまいたいのである。
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