絢爛豪華な名車たちが繰り広げる夢の祭典
土曜。いよいよコンクールの本番だ。早朝、参加者たちはめいめい自走でホテルの敷地内でクラスごとに定められた展示場所へと向かう。我々のミウラは展示会場の最も奥まったヴィラの前。眺めとしては最高の場所に収まった。
基本的にお祭りなのだが、参加者が最も緊張する瞬間がジュリー(審査員)による「品定め」の時間だ。クラスごとに審査の時間帯が決められており、オーナーと関係者はその時間になるとクルマの近くで待機しなければならない。時間が迫ると周りの空気もピリピリ。ミウラのエントリーしたクラスEは戦後のグランドツーリングカーで、アルファ ロメオやフェラーリのレアモデルばかり7台がエントリーするという激戦区。どう足掻いても勝てそうにない相手ばかりだったが、ジュリーが近寄ってくるとそれはそれで緊張する。個体のヒストリーを簡単に説明し、ジャッジの指示でカウルやドアを開け、ヘッドライトやウインカー、フォーンを機能させる、というあたりはコンクールでの決まった作法である。
あいにく夕方になって雨も本降りの様相に。コンクールのメインイベントというべき場内パレードが始まった(それぐらい広いということ)。湖畔とホテルの建物との間を全参加車両がゆっくりと走る。審査員や多くの観客で花道ができているのだ。ヴィラデステの晴れ舞台である。
参加者や観覧者の人気投票によるベスト・オブ・ショー(コッパドーロ・ヴィラデステ)がまずは発表される。香港から参加したフェラーリ「250カリフォルニアスパイダー」が獲得。ハードトップを備えたライトブルーの美しい個体だった。そしてこの夜は近接するヴィラ・エルバに移動(シャトルか船で!)してRMオークションを楽しみ、カクテル&ディナー、そして深夜までパーティは続いた。
日曜はパブリックデイ、一般公開の日だ。こんどは昨夜のパーティ会場だったヴィラ・エルバへと自走で向かう。ヴィラデステからヴィラ・エルバまではほんの1kmくらい。とはいえ小さな街を抜けていく。ヴィンテージカーのみならずレーシングカーもこの日ばかりは特別な許可を得て公道を駆け抜ける。知り合いのベルギー人の駆るポルシェ917Kが街中を走るシーンなどは一生の思い出になった。
参加者は夕方、再びヴィラデステへ。もう一度、走る姿を見ることができるというわけで、通り過ぎる街は多くの見物客で賑わっている。その中を手を振りながら抜けていく快感は、ミッレミリアに匹敵するものだ。
クルマ好きとして夢のような週末を締めくくったのはブラックタイ着用(正装)によるガラ・パーティ。カクテルタイムにはようやく陽光も煌めいてきた。美しいコモ湖畔がやっと姿を現す。ジュリーの選んだ栄えあるベスト・オブ・ショーを獲得したのは、インドのマハラジャが愛したデューゼンバーグ「SJスピードスター」であった。