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「ディーノ246GT」とポルシェ「カレラRS」と合わせて3羽カラス! アルファ ロメオ「モントリオール」の発進はフェラーリよりも難しかった!【クルマ昔噺】

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TEXT: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)  PHOTO: 中村孝仁

重くシビアなクラッチミート位置で発進に苦労

しかしながら、実際に乗ってみるとこの3羽カラスの中で一番乗りにくいクルマであったし、性能的にはマイルドなクルマであったことも事実。乗りにくくしていた原因は、ひとつにはスピカ(Società Pompe Iniezione Cassani & Affini)製の燃料噴射のナーバスな点と、同じくナーバスでまるでレーシングカーのようにほとんど半クラッチを受け付けないクラッチに起因する。

始動はこのスピカ製の燃料噴射の独特なヒューンという音から始まり、数秒のクランキング後、フロントのV8がゴーっという音を立ててかかる。さすがにV8で、そのエンジンサウンドはかなり豪快である。そしてクラッチは、はっきり言ってかなり重い。

しかし、当時のフェラーリにしてもランボルギーニにしても、その重さは半端じゃなかったから、モントリオールの重さはましな方だった。ただストロークが無い。そしてミートの位置はほんの一瞬。床下まで踏みつけたクラッチをゆっくりと戻すと、ほんの一瞬エンジン回転が下がるところがあって、そこを狙ってクラッチはそのままに、そしてアクセルを少しだけ煽って発進する。

クラッチのリリースが少しでも早いとすぐにエンストする。はたして何度エンストしたことか。そしてその都度、隣に乗っていたメカニックから「下手くそ!」という罵声が飛んだのを今でも思い出す。だから、信号は嫌だった。とくにそれが上り坂だったりすると恐怖。当然サイドブレーキをかけて発進することになる。

アルファ ロメオ モントリオール

何故このクルマの発進が苦手だったかというと、当時のフェラーリがとくに、シングルプレートでひ弱なクラッチを持っていたため、俗に言うレーシングスタートは厳禁。おもむろにクラッチを離し、クルマが動き出した後にアクセルを吹かすのを常としていたのだが、モントリオールの場合はクラッチを離しただけではエンストしてしまうためにどうしてもアクセルを入れてやる必要があったからだ。つまりフェラーリのつもりで発進することを会社側に要求されていたからだと言ってよい。

走ってみても俊敏で非常にピックアップの良かったポルシェにはとても及ばず、軽快で長い加速感を持ったディーノにもフィーリングでは勝てなかった。調べてみると3925台作っており、ディーノの総生産台数を少し超える数が生産されているのだが、日本ではやはり目立つクルマではなかったようだ。デザインはガンディーニ。でもまだジウジアーロの影響を受けている印象が強く、ボディサイドの縦に並んだエアスリットは「カングーロ」から受け継いだものだった。

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  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 幼いころからクルマに興味を持ち、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾る。 大学在学中からレースに携わり、ノバエンジニアリングの見習いメカニックとして働き、現在はレジェンドドライバーとなった桑島正美選手を担当。同時にスーパーカーブーム前夜の並行輸入業者でフェラーリ、ランボルギーニなどのスーパーカーに触れる。新車のディーノ246GTやフェラーリ365GTC4、あるいはマセラティ・ギブリなどの試乗体験は大きな財産。その後渡独。ジャーナリスト活動はドイツ在留時代の1977年に、フランクフルトモーターショーの取材をしたのが始まり。1978年帰国。当初よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動し、すでに45年の活動歴を持つ。著書に三栄書房、カースタイリング編集室刊「世界の自動車博物館」シリーズがある。 現在AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)及び自動車技術会のメンバーとして、雑誌、ネットメディアなどで執筆する傍ら、東京モーターショーガイドツアーなどで、一般向けの講習活動に従事する。このほか、テレビ東京の番組「開運なんでも鑑定団」で自動車関連出品の鑑定士としても活躍中である。また、ジャーナリスト活動の経験を活かし、安全運転マナーの向上を促進するため、株式会社ショーファーデプトを設立。主として事業者や特にマナーを重視する運転者に対する講習も行っている。
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