日本人に受け入れやすいモダンフレンチに仕上がっている
2023年6月20日に新型プジョー「408」が発表され、7月1日から販売開始された。車両価格は429万円(消費税込)からとなっている。特徴的なのは、セダンとクーペを融合したスタイリングだ。今回はプジョー408の試乗会に参加してきたので、その印象をお伝えする。
10年以上のときを経て「40X」シリーズが復活
プジョーの「40X」シリーズといえば、リュック・ベッソン製作の映画『TAXi』を思い浮かべる人がいるかもしれない。主人公であるタクシードライバーの愛車が、プジョー「406」だった。ちなみにこの映画は大ヒット作となり、シリーズ4作目では主人公の愛車は現実に即して406から「407」へとモデルチェンジしていた。
このようにプジョーの「40X」シリーズは、フランスでは広くタクシーとして使われるいわば国民的セダンだった。ドイツならメルセデス・ベンツ「Eクラス」、日本ならかつての「クラウン」という位置づけと言えるだろう。
しかし「40X」シリーズは、407が2011年に生産中止となったことで一度消滅。セダンとしての役割は現行ラインナップにある「508」に受け継がれた。それから10年以上のときを経て「40X」シリーズが復活したというわけだ。
新型408の最大の特徴は、ファストバックとクロスオーバーを融合させたスタイリングだ。エクステリアデザインは、フレームレスグリルやライオンの牙をモチーフにしたLEDデイタイムランニングライト、リアのライオンの爪をイメージした鋭い3本のLEDランプをはじめ、彫りの深いプレスラインやユニークな造形のルーフスポイラーなど、非常に凝ったディテールが印象的なもの。
ボディサイズは、全長4700mm、全幅1850mm、全高1500m、ホイールベース2790mm。立体駐車場にも入る、日本の道でも取り回しやすいサイズ感だ。じつは「308SW」が、全長4655mm、全幅1850mm、全高1485mm、ホイールベース2730mmと比較的近いサイズだが、60mmものホイールベースの拡大が、後席の広さに効いている。
インテリアは、小径ステアリングの上からメーターをのぞきこむプジョー独自の「i-Cockpit」デザインで、基本的には308のものを踏襲する。センターには10インチタッチスクリーンを配置し、スマートフォンのように滑らかな操作を可能にする。
またGTグレードには最新のインフォテイメントシステム「Peugeot i-Connect Advanced」を搭載。これは音声認識コマンド「OK、プジョー」で起動し、ナビゲーション、エアコン、シートヒーター、オーディオ、電話などさまざまな機能を声で操作できるもの。さらにOTA(Over The Air )にも対応しており、通信を使ってソフトウェアの改善やバグ対応などが可能である。
パワートレインは、ガソリンとプラグインハイブリッド(PHEV)の2種類を設定。前者は、130ps/230Nm を発揮する1.2L直列3気筒ターボエンジンで、8速ATを組み合わせる。後者は最高出力180psの1.6L直4ターボに、モーターと8速ATが組み合わせたもので、66kmのEV走行を可能とする。
ガソリンモデルのエンジンの吹き上がりは軽い!
試乗車は、1.2Lのガソリン仕様だった。過去にインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞した定評のあるエンジンだけに、言われなければおそらく1.2Lとは気づかないほどパワフルに走る。エンジンの吹き上がりは軽く、トランスミッションも小気味よく変速していく。より元気に走りたい場合はスポーツモードにすると、1速下のギアをセレクトしてくれる。パドルシフトを駆使すればさらにスポーティな走行も可能だ。
足元には205/55R19サイズのミシュランeプライマシーというEV向けのタイヤを装着していた。じつはパワートレインの違いによる車両重量をみてみると、ガソリン仕様が1430kgなのに対してPHEVは1740kgと310kgも重くなっている。このタイヤはPHEVをカバーすることを前提に選択されているため、少しばかり路面とのあたりが硬く感じられた。まだ馴染んでいないということもあるだろうけど、もう少しサイドウォールの柔らかいタイヤを装着すれば、いわゆる「猫アシ」感が出るのではないかと思った。
ADAS(先進運転支援システム)は、アクティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付き)やフロント&サイドカメラによる360°ビジョンなど、最新のものを搭載する。ステランティスグループのシナジーもあって、車線内の右寄りや左寄りなど、ドライバーの任意のポジションを維持してクルーズするレーンポジショニングアシストも装備するが、高速道路での渋滞時にすり抜けしていく二輪車を避けるようなシーンではとても役に立つ。
新しい「40X」シリーズは、いわばセダン・ステーションワゴン・SUVのいいとこどりである。そのコンセプトは奇しくも、新しく生まれ変わったクラウンと似ているから面白い。国民的セダンを現代的に解釈するとクロスオーバーに帰着するのは、フランスでも日本でも同じということのようだ。トータルとしてクラウンと同様に、新型408も日本人に受け入れやすいモダンフレンチに仕上がっている。
プジョー408GT(カッコ内はGT HYBRID)
・車両価格(消費税込):429万円〜(消費税込)
・全長:4700mm
・全幅:1850mm
・全高:1500mm
・ホイールベース:2790mm
・車両重量:1430kg(1740kg)
・エンジン形式:直列3気筒DOHCターボチャージャー(直列4気筒ターボチャージャー)
・排気量:1199cc(1598cc)
・エンジン配置:フロント
・駆動方式:前輪駆動
・変速機:8速
・最高出力:130ps/5500rpm(132ps/6000rpm モーター出力:30Nm)
・最大トルク:230Nm/1750rpm(250Nm/1750rpm モーター出力:81Nm/2500rpm)
・公称燃費(WLTC):16.7km/L
・ラゲッジ容量:536L
・サスペンション:(前)マクファーソンストラット式、(後)トーションビーム式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ディスク
・タイヤ:(前)205/55R19、(後)205/55R19