圧倒的な使い勝手とユニークなバリエーションを誇った初代RVR
通常の記事の原稿では特別な事情がない限りフツーに「RVR」と表記されたが(以下もそのように表記)、初代RVRの車名の1文字目の「R」は反転して表記されるのが正式。メーカーから発行されるニュースリリースの見出しの車名も、つねに車名の1文字目の「R」が裏返してあった(本文中はその限りではなかった)。なおRVRのロゴに添えられたルビは「アール・ヴィ・アール」だった。また2010年に車名が復活した際の表記では1文字目は反転させておらずフツーにRVRだった。
インナーレール式スライドドアを乗用車世界初採用
Recrational Vehicle Runnerの意味が込められたRVRが三菱自動車から登場したのは1991年2月。じつはこの年の5月には2代目の「シャリオ」が登場しており、初代RVRはいわばそのショートボディ版。ただし、単にシャリオに対してホイールベースが200mm短いだけではなく、まったく新しいタイプのクルマとして誕生したのが特徴だ。
「あるときはセダンとしてタウンユースできびきび走り、あるときはグランド・ツーリングカーとして余裕をもって走り、そしてあるときはRVとして人をゆったり、荷物をたっぷり載せて走れる、多面的な機能と性能をもったおしゃれでコンパクトなユーティリティカー」(発表当時のニュースリリースより)をコンセプトにしていた。
実車は(当然ながら)カタログの写真のイメージどおり。全長4360~4290mm、全幅1695mm、全高1680~1625mmと、短くて背を高くとった、ユニークだが見るからに豊かな室内スペースを確保していそう……と思わせられるもの。
その中でさり気なく「乗用車世界初」をうたっていたのが、インナーレール式スライドドアの採用だった。これはスライドドア天地中央のレールをドア側、アームをボディ側に設け、上下のレール(ボディ側)とアーム(ドア側)を組み合わせた構造としたもので、ボディ後部にスライドレールが露出しない点が特徴。外観がスッキリするため見栄えもよかった。
一方でチェアライクシートと呼ばれたフロント席はステップ高と座面高がワンボックスよりも低く、一般的なセダンよりは高い、スムーズな乗降性と良好な運転視界を確保したものとなっていた。
また室内の使い勝手のよさもRVRならではだった。とくにフラットな床面をもつ後席は、シートに300mmのロングスライド機構を持たせ、リアモーストの状態ではまるでリムジンのようなゆったりとしたスペースを実現。左右席個別のカップホルダー、シークレットボックス、アクセサリーソケットなど、利便性を考えた装備も備えた。また後席をフロント側に寄せ、シートをタンブル状態に前方へハネ上げると、広々としたラゲッジスペースが確保できた。
搭載エンジンは2LのDOHC 16バルブ(4G63型・140ps/17.5kgm)でスタート、駆動方式はフルタイム4WDをメインに据え、2WD仕様も用意した。
スポーツギアやオープンギアなども展開
それと、いかにもRVRらしいバリエーション展開でもユーザーを愉しませてくれた。
その中の1台が1992年10月に登場したスポーツギア。「行動半径をさらに広げるフィールドエクスプレス」を狙いに開発されたこのスポーツギアは、210mmの最低地上高(標準車は160mm)が確保され、今で言うクロスオーバー的なキャラクターが与えられたモデル。
外観では大型フロントグリルガードをはじめアルミ製スキッドプレート、マッドガード、さらにRVRの印象をよりたくましくしたワイドフェンダー(全幅は1740mm)、サイドステップ、さらに標準タイヤをマウントしたテールゲート背面のスペアタイヤキャリアなどを装着した。エンジンは160psにパワーアップを果たした2Lガソリンに加え、2Lディーゼルターボも設定。4WDはセンターデフとビスカスカップリングを組み合わせたフルタイム4WDとした。
さらに1993年8月になると、今度はオープンギアが登場。こちらは2ドアボディに電動オープンルーフを備えたモデルで、フロント部分の約70cmのルーフがスイッチひとつで後方にスライドさせられ、フロントシート頭上がオープン状態にできるというもの。ボディ色はスライドルーフ部分が有彩色のボディ色とし、ボディ後半と下部はラガーディアシルバーの3ウェイ2トーンで、見ても乗っても個性が味わえるRVRだった。
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RVRそのものは230ps/29.5kgmを発揮する2LのDOHC 16バルブインタークーラーターボの設定(1994年のマイナーチェンジ時)や、1997年にはエアロパーツを装着したハイパースポーツギアなども登場。いわゆるRVがトレンドだった時代に、三菱の得意技が投入された実用的でアクティブなクルマだった。