ファミリーセダンのブルーバードをベースにオープンボディと強力なエンジンを採用
フェアレディが真のパフォーマンスカーとしての道を歩み始めるのは、1962年10月に発売されたフェアレディ1500からである。ダットサンの伝統に則ってオープンカーとした。1960年代までは、スポーツカーはオープンカーというのが定番と言われてきた時代だったのである。さらにボディに対して1クラス上のパワーユニットを組み合わせている。
型式はSP310。その型番からもわかるように、P310型ブルーバードのラダーフレームやサスペンションなどを流用した、スポーツモデルという位置付けなのである。
エクステリアはSP211型フェアレディから一気にモダナイズされ、ダイナミックなフォルムに生まれ変わった。全長は4mに満たないが、それまでと違ってフロントマスクは迫力があり、見るからに速そうだと感じさせるデザイン。長く伸びたメッキのモールやバンパーも大人のムードを演出する。全体としてイギリス製のスポーツカーのような雰囲気を醸し出し、シンプルだが、強い個性を放っている。緩やかに後方へとスロープしたトランクの外側に張り出している縦3連のリアコンビネーションランプも味わいのあるレイアウトと言えるだろう。
シャシーは初代ブルーバードをベースに、トランスミッションの後方にX型クロスメンバーを追加して強化した。
サスペンションもブルーバード用に改良を加えて装着している。フロントはダブルウィッシュボーンにコイルスプリングの組み合わせ。スプリングレートは高められている、リアはリーフスプリングのリジッドアクスルの7枚リーフとし、加速時や急制動時のワインドアップ(浮き上がり)現象を抑えている。
ブレーキはフロントが2リーディング式、リアがリーディング・トレーリング式のドラムブレーキだ。ステアリングギアは、ひと世代前のカム&レバー式。ブルーバードと同じだが、シャフトの途中にU字ジョイントを設けて角度を寝かせている。軽く操舵でき、それなりにクイックだから気持ちいい走りを楽しめる。
注目のエンジンは、初代「セドリック」が積んでいたG型直列4気筒OHV。総排気量は1488ccで、SUタイプのシングルキャブを装着する。最高出力は71ps/5000rpm、最大トルクは11.5kgm/3200rpmを発生。トランスミッションは、2速ギア以上にシンクロ機構を備えた4速MTを組み合わせている。最高速は150km/hで、0-400m加速は20.2秒だった。
欧州スポーツカーを鈴鹿サーキットで破る実力
1963年5月、フェアレディ1500は三重県・鈴鹿サーキットで開催された第1回日本グランプリに出場する。GT‒IIIクラスでヨーロパの名門スポーツカーを退けて、堂々のデビューウィンを達成した。だが、優勝車は量産車とエンジンが違うのではないか、とクレームが付いた。
そこで1カ月後に商品改良を行い、輸出仕様のダットサン1500と同じSUツンキャブを装備。トランスミッションのギア比も変更している。このときにロッカーカバーもアルミ製の鋳物に変更された。性能面では80ps/12.0kgmに向上し、最高速度は155km/hに引き上げられている。
1965年5月、フェアレディは大がかりな仕様変更を行った。車名は「フェアレディ1600」、型式はSP311となる。コンロッドのビッグエンドにF770メタルを採用した1595ccのR型直列4気筒OHVエンジンを搭載。最高出力は90ps/6000rpm、最大トルクが13.5kgm/4000rpmとそれぞれ向上し、瞬発力を増した。トランスミッションはポルシェタイプのフルシンクロ4速MTだ。
ダットサン フェアレディ1500(SP310)
・年式:1965
・全長×全幅×全高:3910mm×1495mm×1305mm
・ホイールベース:2280mm
・トレッド(F/R):1213/1198mm
・車両重量:910kg
・エンジン:G型直4OHV+SUツインキャブ
・総排気量:1488cc
・最高出力:80ps/5600rpm
・最大トルク:12.0kgm(118Nm)/4000rpm
・変速機:4速MT
・サスペンション(F/R):ダブルウィッシュボーン/半楕円リーフスプリング
・ブレーキ(F/R):2リーディング/リーディングトレーリング
・タイヤ:5.60-13-4PR
■「国産名車グラフィティ」記事一覧はこちら