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「ハコスカ」の50連勝を阻止したマツダ「サバンナ」は、ロータリーエンジンの戦闘力をサーキットで見せつけてくれました【国産名車グラフィティ】

「ハコスカ」の50連勝を阻止したマツダ「サバンナ」は、ロータリーエンジンの戦闘力をサーキットで見せつけてくれました【国産名車グラフィティ】

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TEXT: 片岡英明  PHOTO: 増田貴広

10Aエンジン搭載のサバンナがハコスカの連勝記録を止めた

サバンナに用意されたパワーユニットはコスモスポーツとファミリア ロータリークーペで実績を積み、細かい改良によって熟成の域に達した10A型2ローターREだ。単室容積491ccの2ローターだから総排気量は982ccとなる。ローターの回転運動でパワーを取り出す構造ゆえモーターのようになめらかで、高回転まで回しても驚くほど静かだ。

アイドルリミッター付き2ステージ4バレルキャブレターはベンチュリー径とジェット径を拡大。軽合金ローターハウジングは3孔式排気ポートを採用した。また、電極突出型の点火プラグの採用もあり、最高出力は105ps/7000rpm、最大トルクが13.7kgm/3500rpmと従来より向上した。

トランスミッションは4速MTで、最高速度はクーペが180km/h、セダンは175km/hだ。0‒400m加速タイムは16.4秒。セダンのGRはファミリーカー然としたたたずまいの目立たないクルマ。しかし侮ると痛い目に遭うという、まさに通好みの羊の皮を被った狼だった。1971年1月にREマチックと名付けた3速ATを世界初採用する。

サスペンションはフロントがストラット&コイル、リアはリーフスプリングによるリジッドアクスルだ。リアにバイアスマウント方式を採用することで、REパワーに負けない足まわりが完成した。ブレーキはフロントがディスク、リアはリーディングトレーリングだ。

1972年9月、クーペGSの上にGTを設定した。これは北米向けのマツダ「RX‒3」の日本仕様だ。エンジンはローターハウジングの厚みを10mmやし、単室容積573ccとした12A型2ローターREを搭載する。排気孔をハニカムポートとし、トルク特性を大きく改善した。最高出力は120ps/6500rpm、最大トルクも16.0kgm/3500rpmに引き上げられている。

トランスミッションは5速MTのみを設定する。最高速度は190km/hになり、0-400m加速タイムは15.6秒だ。サバンナはサーキットでも群を抜く速さを見せ、10A型エンジンを積んだサバンナが、1971年12月の富士ツーリストトロフィーでC10型「スカイラインGT-R」を破り、50連勝を阻止する大金星。1972年5月の日本グランプリでもRX-3とカペラのロータリー勢が表彰台を独占した。

コスモスポーツから継承したT型ダッシュボードデザイン

サバンナのインテリアは、コスモスポーツからの流れを汲むT型ダッシュボードを受け継ぎながら、さらに上質感とスポーティムードを高めている。ドライバーの前に大径スピードメーターとタコメーターを据え、センターコンソールに角形デザインのコンビネーションメーターと時計を組み込んだ。彫りの深いメーターだから視認性も優れている。

ステアリングは3本スポークのスポーティなもので、中央のホーンボタンにはロータリーマークが付く。だが、セダンGRなどの後期モデルではおとなしいデザインになり、ロータリーマークも省略されるようになった。

レースデビューの方がひと足早かったRX‒3は、マツダ初のGTを名乗って1972年9月に発売された。インパネの基本的なレイアウトとデザインは他のグレードと同じだ。立体的で、彫りが深いが、ブラック一色のスポーティな仕立てとし、センタークラスターの3連補助メーターは四角から丸形デザインに変わった。また、センターコンソールも刷新。手元に伸びているシフトレバーには、もちろん5速MTの表示がされていた。

GTの投入により、モータースポーツでの勝利が多くなった。モデル末期の1976年5月のJAFグランプリでは、単一モデルとして通算100勝を達成。これは日本のモータースポーツ史に残る快挙だ。またアメリカの伝統レースであるIMSAシリーズでも大暴れした。

1973年から排ガス規制が厳しくなり、自動車メーカーはその対策に追われるようになる。スポーツモデルは軒並みパワーダウンし、精彩を欠くようになった。だが、REは難なく排ガス規制をクリア。7月には10A型エンジンを整理し、エンジンは12A型REだけに絞り込んでいる。このとき昭和50年規制をクリアしたサバンナAPを追加した。

1975年には昭和51年規制もパスしたが、苦闘するライバルを尻目に、サバンナは125ps/16.5kgmにパワーアップ。REだからこそなせる技だった。高性能とクリーン性能を両立させ、REの潜在能力の高さを証明している。1970年代の排ガス規制のなかで輝きが増した数少ないスポーツモデル、それがサバンナだ。

サバンナGT(S124A)
・年式:1974年
・全長×全幅×全高:4075mm×1595mm×1355mm
・ホイールベース:2310mm
・車両重量:970kg
・エンジン:12A型2ローターRE
・総排気量:573cc×2
・最高出力:125ps/6500rpm
・最大トルク:16.5kgm/4000rpm
・変速機:5速MT
・サスペンション(F/R)ストラット・コイル/リーフ・リジッド
・ブレーキ(F/R)ディスク/リーディングトレーリング
・タイヤ:175/70SR1

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