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ランチア「ミザール」をトリノで試乗! なぜミケロッティのコンセプトカーを取材できたのか? きっかけは中目黒の喫茶店【クルマ昔噺】

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TEXT: 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)  PHOTO: 中村孝仁

室内がとても広く開放感にあふれていたミザール

ベースとなっているのはランチア「ベータ」。そしてミザールは1974年のトリノショーでお披露目された。当時の『カーグラフィック』誌ではあまり好意的なコメントはされていない。と言っても世界にたった1台のコンセプトカーである。そのクルマの鍵をどこの馬の骨ともわからない極東のモータージャーナリストに委ねてしまうのだから太っ腹である。まあミケロッティ側にしてみれば、もう売っちゃったクルマだから……ということでもあったかもしれない。

当然なことだが、インプレッションをするようなモデルではない。ただ、記憶にあるのは室内がとても広く開放感にあふれ、全体として明るかったこと。まあ、姿を見てもらえば納得していただけると思うが、当時のレベルから言ってもそれほど剛性感が低いという印象はなかった(カーグラではその点を指摘していた)。それにそもそもワンオフのコンセプトカーである。

インテリアの作りはとても良かった印象がある。日本では絶対に使わないような素材がふんだんに盛り込まれていたことや、やはりコンセプトカーということで、派手目で美しい仕上がりが求められていたからだと思うが、まだ若かった当時はそんな程度のことでじつに好意的イメージで捕らえた。

イタリアからはるばる日本へやってきた

撮影はトリノのヴァレンティノ公園で行った。ここにはすでに別のクルマの取材で馴染みがあったから、ある意味勝手知ったる場所であった(当時は)。人もほとんどいないし、道の真ん中で堂々と写真を撮っていてもほとんど迷惑がかからない。たしか道のりとしてはミケロッティの工房から30分程度だったと記憶するが定かではない。

当時はイタリア語がペランペランの強ぉ~い味方がいたから、こちらもおっかなびっくりの必要もなく、免許証だって日本の国際免許ではなく堂々とドイツの免許を持っていたのだから、咎められても問題ないと思っていた。

ドイツの免許は僕がドイツに住んでいた時代に取得したもので、その当時は一度取得すれば永久に効力があり、書き換えもない。取得したのは1970年代。それから20年以上経ってドイツでレンタカーを借りたときも普通に使えた。もっとも免許に貼ってあった写真は別人28号になっていたが……。ちなみに、今でも持っている。

その後、このクルマはもう1台の「ミケロッティ レーザー」と呼ばれたクルマとともに日本にやって来た。そして2019年に開催された「ノスタルジック2デイズ」に2台揃って展示されたそうである。その後の消息は、2020年には千葉県松戸市の「昭和の杜博物館」に展示されていたことまでは、わかっている。はたして今でもここにあるのかは不明。そしてこのクルマについては完成してからほどなく日本にやって来てしまったために、海外での解説が非常に少ないし、日本でも多くは語られていないクルマである。

ちなみになぜウシオ電機がこのクルマを購入したかも今となっては不明である。余談ながらウシオ電機創業者の牛尾治朗氏が先日お亡くなりになった。

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  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 中村孝仁(NAKAMURA Takahito)
  • 幼いころからクルマに興味を持ち、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾る。 大学在学中からレースに携わり、ノバエンジニアリングの見習いメカニックとして働き、現在はレジェンドドライバーとなった桑島正美選手を担当。同時にスーパーカーブーム前夜の並行輸入業者でフェラーリ、ランボルギーニなどのスーパーカーに触れる。新車のディーノ246GTやフェラーリ365GTC4、あるいはマセラティ・ギブリなどの試乗体験は大きな財産。その後渡独。ジャーナリスト活動はドイツ在留時代の1977年に、フランクフルトモーターショーの取材をしたのが始まり。1978年帰国。当初よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動し、すでに45年の活動歴を持つ。著書に三栄書房、カースタイリング編集室刊「世界の自動車博物館」シリーズがある。 現在AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)及び自動車技術会のメンバーとして、雑誌、ネットメディアなどで執筆する傍ら、東京モーターショーガイドツアーなどで、一般向けの講習活動に従事する。このほか、テレビ東京の番組「開運なんでも鑑定団」で自動車関連出品の鑑定士としても活躍中である。また、ジャーナリスト活動の経験を活かし、安全運転マナーの向上を促進するため、株式会社ショーファーデプトを設立。主として事業者や特にマナーを重視する運転者に対する講習も行っている。
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