参戦費用を抑えられる東北660選手権は若者が多い
いつしか「若者のクルマ離れ」なんて言葉が世に浸透してしまったが、サーキットで行われるモータースポーツの実情はどうなのだろう。軽自動車による草レースとして人気の東北660シリーズは、当初から10代や20代のエントラントが非常に多く参戦。2015年ごろになると大学の自動車部やサークルも増え始め、現在では全体の30%くらいを10~20代のドライバーが占めている。改造範囲が狭いためチューニングの費用が安く済むこと、また維持費もリーズナブルでありエアコン装着が必須なので、通勤や通学といった街乗りに使えるのも理由のひとつだ。2023年に新規参入を果たしたルーキーから、とくに注目したい女性ドライバーを紹介しよう。
まだルーキーながら表彰台まであと一歩の走りを見せた
ひとりは日本大学工学部の自動車部員で、当初は先輩の応援に来ていた七島葉月選手。フルグリッドが当たり前で接近戦だらけのレースに、始めのうちこそ「怖い!」と感じていたものの、いつしか同じステージで戦ってみたい欲求が生じ、先輩のツテでダイハツ「エッセ」を購入したという。
自動車部の仲間たちと車両規則に沿って作り込み、デビューしたのは2022年の特別戦だったセミ耐久。実際にレースを体験してみると怖さより楽しさが勝り、今シーズンは東北660選手権へのフル参戦を目指している。
開幕戦のスポーツランドSUGOこそ予選を通過できなかったが、第2戦のエビスサーキット東コースは予選6番手からジャンプアップし、表彰台まであと一歩のクラス4位というなかなかの成績を収めている。応援してくれる自動車部の仲間やOBは多く、パドックでは他の学校との交流にも積極的だ。
レースは初参戦となったが果敢に攻めて5位フィニッシュ
もうひとりは2023年の第2戦が正真正銘のデビュー戦だった、L275型ダイハツ「ミラ」でエントリーした緑川真奈美選手だ。NC型マツダ「ロードスター」でジムカーナの経験こそあれど、複数のマシンが混走となるレースは今回が初体験。昔からサーキットを走っている父親と仲間たちが、車両製作から現場でのサポートまでバックアップする。
目標はクルマを壊さず無事にチェッカーを受けること、レースならではの他車との駆け引きを経験することで、クラス5位でフィニッシュしデビュー戦を締め括った。緑川選手たちが目標とする軽自動車の耐久レースに向け、大きな階段をひとつ上ったといえるのではないだろうか。
彼女たち以外にも若手が多く活躍している東北660シリーズ、ここで出会ったライバル同士が組んで耐久レースに出るなど、地域や年代を超えた仲間の輪を広げる場としても重宝されている。サーキットやレースに興味はあるが不安な人や、モータースポーツを楽しむ友達が欲しい人は、東北660シリーズの現場まで足を運んでほしい。ピリピリしていない和やかなパドックの雰囲気を肌で感じ、激戦を終えた直後から笑顔で語り合う姿を見れば、レースに対する心理的なハードルが間違いなく下がるはずだ。