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プアマンズ・フェラーリじゃない! こどもが夢中になったアルファ ロメオ「モントリオール」のギミックとは?

プアマンズ・フェラーリじゃない! こどもが夢中になったアルファ ロメオ「モントリオール」のギミックとは?

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TEXT: 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)  PHOTO: Courtesy of RM Sotheby's

ティーポ33用のV8ユニットをフロント搭載したエキゾチックカー

1970年代中ごろ、子どもたちの周りにあるさまざまなモノがクルマ関連グッズと化した空前絶後の「スーパーカーブーム」。当時の子どもたちを熱狂させた名車の数々を回顧するとともに、今もし買うならいくらなのか? 最近のオークション相場をチェック。今回はアルファ ロメオが1970年に発売した「モントリオール」です。

ガンディーニが線をひいたコンセプトカーを量産化

1910年にイタリアのミラノで設立されたアルファ ロメオは、間違いなく名門ブランドのひとつだ。スポーツカーメーカーとしての印象が強いが、アルファ ロメオも1970年にエキゾチックカーの「モントリオール」をリリース。エクステリアがどことなくランボルギーニ「ミウラ」に通じるようなスタイルだったこともあり、フロントにV型8気筒エンジンを搭載し、220km/hというトップスピードを誇ったモントリオールも、スーパーカーブーム全盛時に子どもたちから注目された。

ブーム全盛時におけるスーパーカーの「三種の神器」といえば、リトラクタブルヘッドライト、ウェッジシェイプ、ミッドシップレイアウトと相場が決まっていたが、モントリオールはひとつも該当していなかった。では、なぜモントリオールも子どもたちの間でスーパーカーの仲間として語られたのかというと、元ネタとなったコンセプトカーのデザインを手がけたのがマルチェロ・ガンディーニだったからだ。

元ネタとは、カナダのモントリオールで1967年に開催された万国博覧会のイタリア館に展示されたスタイリッシュな「ベルトーネ製モントリオール」のことで、この時代のアルファ ロメオ「ジュリア」のシャシーおよびパワーユニットを使ったイタリアンGT路線のコンセプトカーであった。

個性的すぎるヘッドライトが少年たちのハートを鷲づかみ

ジュリア系の4気筒ツインカムエンジンを積んだまま登場していたら、エキゾチックなスーパーカーではなくジュリアシリーズの親玉のような立ち位置になっていたのかもしれないが、まだまだ元気いっぱいだったアルファ ロメオはモントリオールのフロントにレーシングスポーツとして名を馳せた「ティーポ33」用のV型8気筒エンジンを工夫して押し込み、ワンランク上の走りを実現。最高出力200psというハイパワーを活かし、ジュリアよりもハイスピードクルージングを楽しみやすかったこともあり、最も安価なイタリアンエキゾチックカーとして一定数のファンを獲得した。

レーシングカーに端を発するV8エンジンを積んでいた点も子どもたちを熱くさせたが、それ以上にキッズたちが「スゲェ~」と思ったのは、独自の機構を持つヘッドライトまわりであった。前照灯こそ固定式だったが、可動式の日除けのようなモノがあり、これがウイ~ンと動いてヘッドライトの下側に格納されたのだ。日除けが無くなるとボンネットに切り欠きが現れ、フロントマスクの表情が変わったので、子どもたちはガンディーニが考えたデザインを実現するために用意されたギミックにビックリしたのであった。

オークションでの落札価格は1110万円

1977年までに3925台がラインオフしたといわれているモントリオールは、「33ストラダーレ」というスーパースターと比較されてしまったこともあり、いまも昔もややマニアックなクルマという位置づけに甘んじているが、少数だが熱心なファンを獲得している。

去る2020年10月アメリカでRMサザビーズが開催した「THE ELKHART COLLECTION」オークションでは、1971年式アルファ ロメオ モントリオールが10万6400ドル(当時レートで邦貨換算約1110万円)で落札されている。

かつてアルファ ロメオの最高価格車であったにもかかわらず、フィアット「X1/9」と同様に「プアマンズ・フェラーリ」的な存在として扱われてしまったモントリオールも、今後再評価されてほしい不遇のスーパーカーだ。

■「スーパーカー列伝」連載記事一覧はこちら

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  • 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)
  • 高桑秀典(TAKAKUWA Hidenori)
  • 本業はフリーランスのライター兼エディター。1998年に買ったアルファ ロメオGT1600ジュニア(通称:水色号)を現在も愛用しており、すでに総走行距離が30万8000kmオーバーとなっている(2022年4月中旬現在)。クラシックカーラリーに水色号で参戦取材することがライフワーク(?)となっており、群馬をホームタウンとして開催されている「スプレンドーレ」では、柴犬を“ワン・コドライバー”、秋田犬を総監督として挑んでいる。全国各地に水色号でお邪魔しているので、これからも走行距離が順調に伸びる予定。
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