1.6Lエンジンをベースにストロークアップ&DOHC化
マークIIには、2タイプの直列4気筒SOHCエンジンが設定されていた。ボトムは1591ccの7R型で、これはシングルキャブレター仕様。このエンジンの上位にSUツインキャブ装着の7R‒B型エンジンを用意している。上級に位置するのが1858ccの8R‒B型だ。驚かされるのは、このエンジンは7R型エンジンをベースにしていることである。デビュー時はSUツインキャブとの組み合わせだった。
8R‒B型エンジンは、7R型のボア86.0mmはそのままに、ストロークを68.5mmから80.0mmまで延長し、1858ccとしている。このエンジンをベースに、ヤマハ発動機がヘッドをDOHCに変更したのが10R型だ。トヨタ社内でのDOHC化も検討されたが、この手の開発に精通しているヤマハに依頼したのだ。エンジン型式は、当初10R型だったが後に8R型へ変更される。
シリンダーブロックから下は8R型のものを使っているが、剛性を高めるためにクラッチハウジング部を切り離し、ディープスカート設計としている。また、シリンダーヘッドを冷やすための水穴に加工を施し、肉厚を薄くして軽量化した。ヘッド部分はアルミ合金製で、半球形燃焼室を備えている。バルブ径はインテーク側がφ45mm、エキゾースト側がφ37mmだ。トヨタ1600GTの9R型エンジンより燃焼室のドーム形状は浅い。これはノッキング対策と特殊な点火プラグを使わなくて済むという理由からである。
クランクシャフトの支持は5ベアリング式で、2ステージ式ダブルローラーチェーンを受け継いだ。これにツインチョーク・ソレックス40PHHキャブレターを2基装着し、最高出力140ps/6400rpm、最大トルク17.0kgm/5200rpmを絞り出す。トランスミッションは、ポルシェシンクロの5速MTだけの設定だった。
マークII 1900GSSは、後期型が1970年のTSレースにワークス参戦している。また、1971年には8Rエンジンに手を加え、ターボを装着したマークII XRを実験的に走らせた。レースだけでなくモンテカルロラリーに挑戦するなど、一時はトヨタの主力マシンになっている。
北米輸出戦略車ゆえの優雅さと上質感
コロナ マークIIは、コロナの上級モデルで、輸出の戦略車でもあったので上質な仕上げにこだわっている。キャビンはコロナよりはるかに広く、フロントシートだけでなくリアシートに座っても快適だった。ハードトップでも足入れ性はよく、頭上にも余裕がある。
インテリアは水平基調のダッシュボードとスラントさせたメーター配置によって開放感があり、四方の視界も良好だ。上級グレードやSLなどのスポーツグレードは左側にタコメーター、右側にスピードメーターを配し、その間に小ぶりなコンビネーションメーターを組み込んでいる。1900GSSだけは専用メーターをおごり、タコメーターは7000rpmからレッドゾーン、スピードメーターは210km/h表示となっている。ちなみに最高速度は200km/h、0‒400m加速は16.6秒と駿足だ。
トヨタのDOHCエンジン搭載車のなかで唯一、GTを名乗っていないのがこのマークII GSSだ。ラグジュアリー感覚を持ち合わせているため、あえてGTにすることを避けたのだろう。だが、1900GSSは侮れない潜在能力の持ち主だ。エンジンは猛々しいし、リアがリジッドのサスペンションもコントロールしやすい味付けとしている。
パワーに負けないようにリアのリジッドアクスルにはトルクロッドを追加し、リミテッドスリップデフも標準装備していた。日本グランプリでトヨタ7のステアリングを握ったビック・エルフォードも1900GSSのコントロール性のよさを絶賛している。ターボを装着してテストを繰り返していたのも、トヨタの期待の表れと言えるだろう。
「スカイラインGT‒R」より排気量が100cc以上小さく、プライベートユーザーがレースで使うことも少なかった。その実力をよく知られていないから過小評価されているが、当時は憧れの存在だ。その魅力と価値は平成を経て令和の時代になった今になるとよくわかる。
コロナマークII 1900GSS(RT72)
・年式:1971年
・全長×全幅×全高:4300mm×1605mm×1385mm
・ホイールベース:2510mm
・車両重量:1050kg
・エンジン:8R型直列4気筒DOHC
・総排気量:1858cc
・最高出力:140ps/6400rpm
・最大トルク:17.0kgm/5200rpm
・変速機:5速MT
・サスペンション(F/R)ダブルウイッシュボーン・コイル/リーフ・リジッド
・ブレーキ(F/R)ディスク/リーディングトレーリング
・タイヤ:6.45-H-14 4PR
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