可愛らしいルックスで多くの人を虜に
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「デリ丸。」です。三菱の新型軽自動車「デリカミニ」の公式キャラクターである「デリ丸。」が大人気で、かわいい姿を見たくて販売店に訪れる人も多いようです。その人気もあり、デリカミニ自体の受注も好調のようです。「デリ丸。」にまつわる話などを語ります。
デリカミニ販売好調の起爆剤になった
「デリ丸。が三菱の救世主になるかもしれない」
そんな思いを抱いています。「デリ丸。」は三菱自動車の新型「デリカミニ」を象徴するマスコットです。デリカミニのヘッドライトは丸い弧を描いており、悪ガキのようでもありキュートです。憎めない表情が特徴ですね。そんな実車のイメージを見事にぬいぐるみに再現したのが「デリ丸。」なのです。
「デリ丸。」は一般に名前を公募した中で決まったそうです。今のところ性別不明というのがミステリアスですが、どう見てもいたずらっ子の顔ですから男の子でしょうね。
今ではポスターやテレビCMなどにメインキャラとして登場しています。一躍スターになったのです。その人気に後押しされたようで、デリカミニの受注は好調のようです。
三菱は日産と共同開発した「eKクロス スペース」を発売していました。そんなeKクロス スペースをベースに、顔つきを変えるなどデザインを刷新することで、飛躍的に販売受注を増やしたのです。
実際には、最低地上高を高めたり、軽自動車として異例の15インチタイヤを装着するなどして、アウトドア色を強めていますので、販売好調の理由が「デリ丸。」似のデザイン、いやデリカミニ似の「デリ丸。」によるものだけではないとは思いますが、それにしても「デリ丸。」が貢献しているのは明白です。あらためてデザインの力は偉大だと思えます。「デリ丸。」が三菱自動車に活気を与えてくれました。これからの三菱への期待が高まります。
三菱車の魅力をもっと積極的にアピールするべき!
ただし心配もあります。三菱自動車の業績はなかなか上がりません。世界初の量産電気自動車「アイミーブ(i-MiEV)」を発売していながら、その後に訪れたEVブームに乗ることができていません。バイオニアであるはずなのに2021年に生産をやめています。
三菱自動車には他のメーカーに引けを取らないほどの技術がありますから、業界に楔を打つような新型車が突如として現れる土壌があります。ですが、育てることが苦手のようです。グレード展開を広げたり、イベントを仕掛けたりといった策に乏しいのです。
いま販売店には、デリカミニに興味を持ったユーザーが訪れているそうです。そして多くの人が、「デリ丸。に会いたい」と口にする。でも「デリ丸。」はそこにはいない。例えて言うのであれば、「ミッキーマウスは世界に一体」という高度なプロモーション施策であるのなら素晴らしいのですが、こんなに受けるとは思わなかったので製作が……というコメントが関係者の口から漏れてもいます。いい線いってるんだけどなぁ……と言われるのも納得できますよね。
ただし、三菱自動車の中村達夫副社長の言葉が朝日新聞に掲載されていました。「オフロードに強いとか四駆性能が高いとか、三菱ならではのEVを検討している」とのことです。
ということは、eKクロスにEVが追加されたように、デリカミニのラインナップにもEVや本格オフロード走行が可能な4WDモデルが投入されるのだろうと想像してしまいますが、それも期待できますよね。
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それにしても、デリカミニを起爆剤に三菱の業績が伸びたら、「デリ丸。」は救世主になりますね。あのぬいぐるみが発売された際には、ぜひ皆さんのご家庭に飾ってあげてください。