千葉で5月開催のサイドウェイ・トロフィーには6台のオースティン セブンが結集
1923年から生産が開始された「オースティン セブン」は2023年で生誕100周年。イギリスで小型大衆車の普及に貢献しただけでなく、モータースポーツを身近な存在としたクルマでもある。5月に千葉県・袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された「サイドウェイ・トロフィー」には、7台ものオースティン セブンが参加。その中から、トヨタ「コースター」にセブンを積んではるばる大分からやって来たオーナーを紹介しよう。
コースターにセブンを車載、車中泊をしながら大分から参加
千葉県のサーキット、袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催された「Festival of SIDEWAY TROPHY(サイドウェイ・トロフィー)」は、モーターレーシングの黄金期である1950年代から1960年代を中心とした各国のマシンたちの熱いバトルが繰り広げられるイベントだ。
参加車両を運ぶためのトランスポーターの駐車エリアには、セーフティーローダーに混じり、1台のトヨタ製マイクロバス、「コースター」が停まっていた。コースターの観音開きのテールゲートから顔を覗かせているのはオースティン セブンだ。ちょうど、積み下ろしの作業をしていたオーナーに話を聞いてみた。
「オースティン セブンがたくさん集まるから、一緒に走りませんか? と知人に誘われて、車中泊をしながら大分県から来ました」
そう答えてくれたのは、この日、1930年式のオースティン セブンを持ち込んだ明永さん。前回紹介した1937年式の仙石さんと別のイベントで知り合い、誘いを受けたのが今回の参加のきっかけだそうだ。
クラシックカーを乗り継いでクラシック英国車に開眼
免許を取り、初めて手にしたクルマはシボレー「C3コルベット」だったという明永さんが、次に買ったのは「スバル360」。その調子がイマイチで、自分でエンジンをオーバーホールしたら日常生活でも使えるようになったのが嬉しかったこともあり、その後は「ベック550」やフォルクスワーゲンの「バス(タイプ2)」、「ポルシェ356」など、空冷のクルマ趣味を楽しんでいたそうだ。
「10年くらい前に、ポルシェ356のエンジンのオーバーホールで修理工場に預けていたんですが、2年待っても戻らずにいたので、以前から興味を持っていたオースティンA35を手に入れました。それから英国車の魅力に目覚めましたね」
そのオースティン「A35」と、その後A35をベースにしたオースティン「ヒーレー・スプライト」(国産車で言えばカローラとMR2のように、パワートレインなど共通部品を使ったオースティンの量産スポーツカー)を手に入れ、2台のオースティンでヒストリックカー生活を満喫していた。
幸運にもキチンと整備されたオースティン セブンを入手できた
そんなある日、英国のクラシックカーサイトで、3台のオースティン セブンの売り物を見つけた。
「ずっと戦前車には憧れていましたが、金額はもちろんですし、維持費などを考えたとき、なかなか踏み出せずにいたんですよ。これなら購入・維持できそうだと、3台の中で一番安かったセブンに決めました。カッコ良さですと人気の高いアルスター・レプリカもありましたが、値段で選んだのです」
しかし、それが結果的にラッキーな結果となる。送られてきた前オーナーからの資料によると、エンジンはオーバーホールされており、フライホイールも軽量化ずみ。さらにバランス取りの様子やオイルフィルターの増設といった、現代の事情に合わせた対策などの作業をしっかり記録した写真や冊子が届いたという。
次なる目標はトレーラー牽引で2台の「ベビー・オースティン」を運ぶこと
「輸入代行業車さんに輸入から予備検査取得までしてもらったのを引き取り、ナンバーを付けて5年経ってますが、ラリーイベントへの参加など、走行距離は戦前車にしては走ってる方だと思います。なかなかひとりだと腰が重いこともありますが、イベントには積極的に参加するつもりです。コースターも3年前に手に入れてようやく車中泊のスペースもできましたので、これからもお誘いがあれば、あちこち行くつもりです」
「そうそう、先日、牽引免許も取ったので、コースターにトレーラーを牽引してA35とセブンの2台の「ベビー・オースティン」で参加するのも目標ですね」
これからもオースティン三昧の生活を味わい尽くそうという明永さんであった。