7代目まで用意されていたバンモデル
よく人との会話中に「年齢詐称」のため(笑)、実はリアルタイムで見聞きしていても「生まれていないから知らない!」などと言ったりする。だが、初代「プリンス・スカイライン」の登場は1957年のことで、筆者としては「本当に生まれる前(ただし直前)」の話のため、さすがにリアリティのある実車の記憶、体験は書くことはできない。けれど幼少の頃の自分が近所のクルマのゴツいメッキのバンパーに腰かけたモノクロの小さな紙焼き写真が残っているはずだが、そのクルマこそ、プリンススカイウェイといい、のちにスカイラインバンとなるクルマなのだった。
スポーティ・ワゴンだったスカイラインバン
一方で1963年に登場した2代目スカイラインの世代で正式に登場したのがスカイラインエステートだった。この時代であればトモダチの家にセダンがあったり、街中を走るのを見かけた記憶があるが、今、写真で見てもなかなかスマートなクルマだったことがわかる。
写真は東京モーターショーで配られた日産のパンフレットで、別のページに載っている御料車のプリンスロイヤルの説明文に「昨年秋に完成した」とあるところから1967年または1968年のものと思われる。スカイラインエステートについては「いま流行の主流にある車/ゼイタクな乗用車/ショウ洒なスタイルは、ごくあらたまった所でもスマートです/セダンにあきた方、行動半径の広い方の車です」と説明されている。
世代順に見ていくと、1968年に登場した3代目・ハコスカの世代でも、当初からエステートが設定された。写真のカタログはハードトップが登場した1970年以降と思われる1800シリーズのもの。シリーズ共通でリアサスペンションはリーフリジッドながら、「4速フロア・シフトのスポーティ・ワゴンです」と紹介されている。
「座席の延長ともいえるカーゴルームはカーペット敷き」などと記されている。当時としては1800ccでは国産唯一の本格的なエステートであり、搭載エンジンはセダンと共通のG18型(100ps/15.0kgm)。もちろんセダンと共通のサーフィンラインのある外観もスタイリッシュだった。
さらにサーフィンラインを踏襲した4代目・ケンメリの世代でもバンともにワゴンが用意された。スタイリング的にはリアクォーターウインドウをなくし、外観では全面をボディパネルとしたのが特徴で、室内側にはここにカーステレオ用のスピーカーが埋め込み可能になっていた。
写真のカタログ(DM用のコンパクトな冊子)の1800ワゴンスポーティGLは「性能と内装は1800GLがベース」で、小さいながらも掲載の写真を見る限り、木目のインパネやシフトノブ、前席セパレートシートなど、確かにセダンと同等の仕様になっていることがわかる。小さい文字で「性能=最高速度165km/h(4速)、160km/h(フルオート)」といった記載も。
幅広いバリエーションが豊富だった
続くジャパンの世代では、TIシリーズに1800GLとして1タイプのワゴンが用意された。セダン系のリアサスペンションが4リンクコイルスプリングなのに対し、ワゴンはリーフスプリングとそれまでの形式を踏襲。搭載エンジンはZ18型(105ps/15.0kgm)となり、カタログによればトランスミッションには4速フロアシフト、OD付き5速フロアシフト、そして日産マチック(AT、フロア)の3タイプの用意があった。
外観ではリアクォーターパネルにウインドウが設けられており、ラゲッジスペースは、ダブルフォールド式で折り畳んだ状態の後席背もたれ部分にもカーペットが付き、フラット状態のスペースが快適に活用できるようになっていた。写真のウッディサイドパネル、アルミロードホイールはオプションである。
変わって6代目、ニューマン・スカイラインの世代では、新たに登場した5ドアハッチバックが注目だった。「精悍なシルエットに豊かな空間を擁して誕生/スカイラインの伝統の走りと、5枚目のドアが可能にした、この豊かさ、この広さ。ハッチバックもスカイライン設計者が手がけるとこうなります」とカタログにも記されているが、諸元表を見て改めて驚くのは、4気筒で2機種(1.8Lと2L)、6気筒はターボ、ディーゼルを含め3機種と幅広いバリエーションが展開されていたということだ。