リチウムにするならノウハウのある専門店で相談が必要
ハイブリッド車やEVの動力用電源として普及しているリチウムバッテリー。これをガソリン車のスターターバッテリー(クランキング用バッテリー)として、鉛バッテリーに載せ替えるというカスタムがある。バッテリーは身近な消耗部品なので、気になっている人も多いだろうが、そのメリットとデメリットを確認しよう。
メリット
軽くてパワフルなリチウムバッテリーだが、メリットはそれだけじゃない。主なメリットを5点紹介しよう。
1)エネルギー密度が高くパワフル
同サイズのバッテリーで比べた場合、鉛蓄電池では2.1Vの電圧しか出せないのに、リチウムバッテリーは3.2〜3.7Vと高電圧。
2)軽量 コンパクト
リチウムバッテリーの大きな魅力は軽いこと。同容量の鉛バッテリーと比較すると、50%〜70%も軽くなる。例えば、55B19Lの鉛バッテリーの重量は約10kgもあるが、リチウムバッテリーなら、約2kgと超軽量。鉛バッテリーで容量が55Ahだと約20kgになるが、リチウムバッテリーだと50~60Ah換算でたったの5kg。
ボンネット内のフロントオーバーハングにバッテリーを積んでいるクルマなら、ハンドリングに好影響を与えるほど軽くできる。そしてサイズも小さく、コンパクトなので、省スペース化も図れる。
3)充電・放電の繰り返しに強い(長寿命)
リチウムバッテリーは、電気を蓄えるのに化学反応を利用しないのが大きな特徴だ。他の充電式バッテリーに比べて電極の劣化が少なく、充電や放電の繰り返しに非常に強いのも大きな長所。したがって、バッテリーの寿命も長く、鉛バッテリーの3〜5倍といわれている(8~10年)。
4)自己放電(自然放電)がほとんどない
バッテリー上がりの原因のひとつ、自己放電がほとんどないのもリチウムバッテリーのメリット。鉛バッテリーは電気を使っていなくても少しずつ化学反応が進行し、自己放電が進んでしまう。だが、リチウムバッテリーは科学反応を利用しないので、自己放電の心配はしなくていい。
5)CCA(コールドクランキングアンペアー)が高く、エンジンの始動性が向上
リチウムバッテリーは内部抵抗値が低く、放電能力にすぐれていてしかも安定している。一般的なバッテリーのCCA値(始動時電流)が200~300Ahなのに対し、リチウムバッテリーは1000Ah! スターターが軽々とまわり、インジェクターや点火系も余裕があるので、始動性がとてもよくなる。そのほかにも、急速充電に向いており、継ぎ足し充電にも強いといったこともリチウムバッテリーのメリットだ。
デメリット
メリットだらけのように見えるリチウムバッテリーにも欠点はある。
1)取り扱いがシビア
高性能なリチウムバッテリーだが、その反面、過充電、過熱、過放電など取り扱いを間違うと、バッテリーの膨張、発煙発火など重大なトラブルを引き起こす可能性がある。信頼できるメーカーであれば、過放電・過充電の保護装置が備わった安全装置付きの製品を販売しているので、購入する際はこうしたものを選ぶのが非常に重要。
2)価格が高い
リチウムバッテリーの最大の欠点は、価格が高いことかもしれない。鉛バッテリー換算で50~60Ahのものでも、6~7万円とかなり高価だ。鉛バッテリーなら1万5000~2万円程度なので……。
3)専用バッテリートレイが必要
リチウムバッテリーは、純正の鉛バッテリーよりもかなりコンパクトなので、固定方法を変更する必要がある場合も。バッテリートレイやステーをワンオフで作ってもらうことも考えておこう。
4)ジャンプスタートができない!?
上記のようにリチウムバッテリーは取り扱いがシビアなので、過放電状態になると分解反応を起こし、次回充電時に膨張や発火する可能性がある。そうした状態になったリチウムバッテリーでジャンプスタートするのはとても危険。
ただし、過放電保護装置が付いたリチウムバッテリーなら、ジャンプスタートも可能だったりするので、取扱説明書をよく読んで確認すること。
このようにたくさんのメリットがありつつ、取り扱いには専門知識が必要なので、購入時には実績とノウハウのある専門店で相談し、安全性の高いバッテリーを選ぶようにしよう。