ミズーリ州の小さな名店たちを訪ねる旅
広大なアメリカを東西2347マイル(3755km)にわたって結ぶ旧国道「ルート66」をこれまで5回往復した経験をもつ筆者が、ルート66の魅力を紹介しながらバーチャル・トリップへご案内。今回は、ミズーリ州の中でも大きな観光スポットではなく、ロードサイドのちょっとマニアックな場所を紹介します。
かつて世界最大だったロッキングチェア
アップダウンが多く「ローラー・コースター・ロード」とも呼ばれる、ミズーリ州のルート66。ゲートウェイ・アーチにメラメック・キャバーンと有名な観光地が続いたので、今回は趣向を変えてルート66沿線にある3つのマニアックなスポットを紹介したい。
ひとつめはセントルイスから90マイルほど西、キューバにある「ファニング66アウトポスト」だ。ルート66にまつわるグッズから食べ物やお酒、日用品まで幅広く取り扱っている雑貨店だが、名所となった理由は屋外にあるロッキングチェア。といっても部屋やウッドデッキに置くような、どこにでもあるロッキングチェアではない。2007年にオープンしたお店の宣伝を目的として製作、高さ12.8mで世界最大としてギネスブックにも認定された。
特別なイベントを除いて登ることはできないが、遠くからでもひと目で分かる圧倒的な存在感で、ルート66の旅では必ず立ち寄りたい場所のひとつ。2015年の8月にはこれを超えるロッキングチェアが作られ、惜しくも世界最大の座を譲ることになってしまったものの、赤く塗り替え「ルート66レッドロッカー」に改名したそうだ。多くの旅人に愛されるお店だったが不況の煽りを受け2016年に廃業、しかし翌年には新しいオーナーが引き継いで2023年の現在も営業中だ。
クラシックカーが並ぶ中古車販売店
巨大ロッキングチェアから15~20分ほど西へ走ると、中古車販売店の「ルート66モータース」にたどり着く。数々のクラシックカーと趣のある建物は初めて走ったときから気になっていたが、旅行者がクルマを購入できるわけがないとスルーしてしまった。後日ルート66のグッズや小物もあると知り、入ってみるとなかなかの品揃えにビックリ。
聞けば1979年にオープンした当時はガスステーションやダイナーが隣接し、ルート66の旅で故障したクルマの修理なども請け負っていたそうだ。インターステートの完成で交通の流れが変わり、ルート66モータース以外の店は続々と撤退。ただひとつ残ったここもオーナーが高齢となり、数年前に新オーナーを募集する告知が出された。もっとも買い手や借り手は現在も決まっていないようで、現在もGoogleマップを見ると「閉業」と表示される。約3kmという近さにインターステートの出入口があり、大型のガスステーションやレストランができた今となっては、わざわざ旧道の小さなお店に寄る人は少ないのだろうか。