復活を望む声が多いアルトワークス
スズキ「アルト」は現在2021年12月に登場した9代目モデルが販売中となっているが、15年振りに先代モデルで復活したワークスはあっさり消滅。現在でも復活のウワサは聞こえてこないが、今回は復活の声が止まないアルトワークスの元祖を振り返ってみたい。
アルトにホットなモデルが追加されたのは2代目モデルから
限られたボディサイズと排気量でありながら、さまざまな車型が存在することで幅広いユーザーから支持を集めている軽自動車。そんな軽自動車の中でも、現在ラインアップがやや手薄となっているのがスポーツモデルだろう。
執筆時点で新車で購入できる軽自動車のスポーツモデルとなると、オープン2シーターモデルのダイハツ「コペン」(GR SPORTのみトヨタでも販売)と、6速MTも用意されているホンダ「N-ONE」のRS程度なのだ。そんな軽スポーツの中で、復活が熱望されているのはやはり「アルトワークス」ではないだろうか。
アルトは元々47万円という衝撃的な価格で登場したベーシックカーであり、4ナンバー登録の商用車は高額な物品税(当時)を回避できるという点を逆手にとった「軽ボンネットバン」ブームの火付け役でもあった。
そんなアルトにホットなモデルが追加されたのは2代目モデルのこと。アルトのホットモデルと言えば前述した通り「ワークス」が知られるところだが、2代目モデルにまず追加されたのは1985年9月に登場した「アルトターボ」である。
ミラに対抗して登場したアルトターボ
軽自動車初の電子制御燃料噴射装置が与えられた、直列4気筒SOHCインタークーラーターボエンジンを搭載した同モデルはカタログ値で44psを発生。これはアルトに先んじてターボモデルをリリースしていたミラ(41ps)に対抗したのは明らかだった。
1985年8月にミラが2代目へとフルモデルチェンジを果たすと、ミラのターボモデルは52psでアルトターボに対抗。アルトは86年7月にマイナーチェンジを実施。スズキ初のDOHCエンジン(42ps)を搭載した「ツインカム12RS」を追加すると同時に、ターボモデルを48psにパワーアップするもミラには届かず、ダイハツの勝利に思われた。
しかしアルトは1987年2月に、ツインカム12RSのDOHCエンジンにインタークーラーターボを追加した最強モデルの「ワークス」をいよいよ発売。当初は80ps弱の出力を発生する予定だったと言われているが、際限なく繰り返されるパワー競争に難色を示した運輸省(現・国土交通省)からの物言いが入り、64psに落ち着いたという逸話が残っている。
結局このときの64psという自主規制値は35年以上経った今でも残っており、初代アルトワークスがいかに突出した性能を有していたかが分かるエピソードと言えるだろう。そんな伝説的なワークスの名前が再び消えてしまうのは残念としかいいようがないので、ぜひともスズキにはホットなモデルの復活を検討していただきたいものである。