超希少な限定車が日本上陸
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「BMW 3.0 CSL」です。2022年にBMW M社の50周年を記念して50台が販売された、超希少モデル。そのうちの1台が、日本にやってきました。BMW 3.0 CSLの魅力などを、木下隆之さんが語ります。
選ばれた50名しか手にすることができない
世界でたった50台、海を渡って運ばれてきた貴重なモデルが密かに日本に陸揚げされていたことをご存知だろうか……。
車名はBMW「3.0 CSL」
2022年で設立50年となったBMW M社が開発した記念モデルがそれだ。50周年に因んだのであろうか、世界で選ばれた50人にデリバリーされる。そのうちのひとり、BMWのカスタムショップとして最大手である「Studie(スタディ)」の鈴木会長が手にしたBMW 3.0 CSLが、ついに日本上陸となった。
初代BMW 3.0 CSLの誕生は、1972年に遡る。つまり、BMW M社が設立された年であり、このクルマのルーツと呼ぶべきモデル。実際に1972年デビュー直後のBMW 3.0 CSLは、いきなりニュルブルクリンク24時間で勝利した。その後のBMW M社の輝かしい歴史は、ここからスタートしたといっていい。その栄光のモデルが現代に蘇ったというわけだ。
それを象徴するように、50年後に蘇ったBMW 3.0 CSLは、50年前のBMW 3.0 CSLの面影を色濃く残す。雰囲気はM4 CSLに似て均整のとれた正統派クーペスタイルではある。M4 CSLとは細部で共通部品もあるのだろうが、もちろん独自に専用開発されている。
そして全てが手作業で組み立てられる。塗装ひとつにしても、Mストライプやアニバーサリーを象徴する「50」の数字などに段差はないという。伝統を感じさせるクラシックな雰囲気の中に、手作りならではの愛情と、そして最新のテクノロジーが注がれているのだ。
ちなみに、搭載するエンジンは伝家の宝刀、直列6気筒3Lツインターボであり、最高出力は560ps、最大トルク550Nmを炸裂させるという。もっとも、蘇ったBMW 3.0 CSLにとって、スペックなどことさら意味を持たないような気がする。実際に走らせたら腰を抜かすほどの速さを披露するに違いない。だが、それよりも存在こそが価値なのだ。
日本円にして約1億3000万円……すでに2億超えの価値との噂も
幸運にもBMW 3.0 CSLを手にする世界で50名の内訳は……。一番多いのが本国ドイツで30名。以下、イギリス、スペイン、イタリア、アメリカ、日本、中国などだそうだ。
気になる金額は、為替の影響もあり1億3000万円ほどだという。希少性が高いことから、すでに2億円を超えるオークション価格というから、価値の高さがうかがえる。
もっとも、投機目的で購入することはまず不可能だ。というのも、世界の50名に選ばれるには、それまでのBMWへの深い愛情が審査されるからである。資金的な裏付けも必要なのは当然のこととして、これまでどれほどBMWを愛してきたが問われるのだ。簡単に手放す顧客にはデリバリーされない。
スタディは日本各地にBMWカスタムショップを展開している。スーパーGTではBMW M4 GT3を走らせ勝利もしている。「BMW M Team Studie」はアジアで唯一BMWのロゴを冠することが許されたチームである。BMWへの貢献度はアジアトップであり、それを本国BMW M社も認めている。それでも、世界で50名に選ばれるまでには時間を要したというから、BMW 3.0 CSLがいかに垂涎のモデルであるかが想像できる。
近日中に、多くの媒体で披露されるに違いないが、今回は速報をお届けする。