キャンピングカーのベース車両として2022年12月に日本上陸
AMW編集部員がリレー形式で1台のクルマを試乗する「AMWリレーインプレ」。今回のお題は、フィアットの商用車部門フィアット プロフェッショナルによる大型バン「デュカト」です。同車をベースにしたキャンピングカーはこれまでも日本に並行輸入されてきましたが、2022年12月から日本国内でもデュカトが正規販売されることに。未架装の「素」の状態のデュカトを編集部・竹内がワインディングで試乗してみました。
ヨーロッパを代表する小型商用車、ハイエースよりビッグサイズ
フィアットといえば日本では「500」のかわいらしいイメージが強いブランドですが、欧州では屈指の総合自動車メーカーとして、「はたらくクルマ」系も幅広くラインナップしてきました。向こうではLCV(Light Commercial Vehicle)と呼ばれる小型商用車のカテゴリーでは、2006年から3代目となっているフィアット デュカトがベストセラーの地位を占めていて、プジョー「ボクサー」やシトロエン「ジャンパー」としてもOEM展開し、さらにキャンピングカーのベース車両としても定番。実際、欧州を走っているとデュカトの一族をあちこちで見かけるほど身近な存在です。
2022年から日本にデュカトが導入されたのも、キャンピングカーのベース車両を想定したもので、現在全国に5つあるデュカトの正規販売代理店は、すべてキャンピングカー市場で実績のあるところです。
さて、今回お借りした広報車は正式名称「デュカトL2H2」で、国内導入モデルの中では一番コンパクトなサイズ。Lが全長、Hが高さで、ほかにロングホイールベースの「L3H2」と、そのハイルーフ仕様の「L3H3」がラインナップされています。
コンパクトとは言っても、デュカトL2H2のサイズは全長5410mm×全幅2050mm×全高2525mmでホイールベース3450mm。参考までに日本でおなじみトヨタ「ハイエース」のスーパーロング・ワイドボディ・ハイルーフ仕様が全長5380mm×全幅1880mm×全高2285mm、ホイールベース3110mmですから、ひと回り以上も大きいことがわかります。
最小回転半径6.3m、先進アシストもあり扱いやすい
コクピットに乗りこむのはよじ登るような感覚ですが、もっちり詰まったシートに腰を下ろしてしまえば、ボディの見切りはいいし、デジタルルームミラーで後方視界も万全。2段重ねのドアミラーに加えて助手席側にはサイドビューモニターも備わり、後退時にはバックカメラも作動するので、車両感覚を把握するのに不安はありませんでした。
はじめに都内で車両を受け取って、首都高まで移動する際に驚いたのが、想像以上に小回りがきくことです。スペックシートによるとデュカトL2H2の最小回転半径は6.3m。車高と幅だけ気をつければ、運転そのものはすんなり馴染むことができます。
高速道路に乗ると、ACC(追従式クルーズコントロール)こそ付いていないものの、レーンキープアシスト機能や通常のクルコンは装備。横風に対してハンドルを補正してくれるクロスウィンドアシストも、このサイズのバンでは恩恵をすぐに感じられました。翌日、夜明け前にワインディングへ向かう山道は濃霧だったのですが、フロントフォグランプがコーナリング機能付きで、曲がっていく方向をしっかり照射してくれるのも便利でした。
シンプルすぎる足まわりなのに不思議と走りやすい
早朝、いろんなクルマを試乗してきたホームのワインディングコースへ到着。まずは山を登りはじめます。デュカトに搭載されるエンジンは2.2Lの直4ディーゼルターボで最高出力180psで、最大トルク450Nmは1500rpmから発揮されるため、車重2110kgのボディでもパワーに不足はありません。最大積載重量が1250kgもあり、キャンピングカーに架装した状態でも心強そうです。そこに組み合されるトルコン式9速ATがなめらかに良い仕事をしてくれます。
デュカトはFFで、リアのサスペンションはシンプル極まるリーフリジッド式。もちろん路面の細かい段差でゴトゴト揺れることは揺れるのですが、乗り心地が悪い、というほどでもありません。ひとつには、もっちり詰まったシートがショックを適度に吸収してくれていることもありそうです。
そして下り勾配でのコーナリング。FFで空荷、そしてシンプルすぎるリアサスと、不安要素しかなかったのですが、攻めずにあくまで常識的な速度域で走る限り、不思議なほどスイっと自然に安心して曲がれてしまいました。カーゴスペースに重量物を積んだ状態であれば、さらに安定感が増すはず。
デュカトのキャンピングカーで出かけるアウトドアフィールドも似たようなワインディングや山道を通っていくことになると思いますが、走りの楽しさ=移動の楽しさもしっかり確保しているところに、さすがイタリア車と感心してしまったのでした。
デュカトにマイクロカーやカートを積んで遊びに行くのもあり!
実際にはほとんどがキャンピングカーとして販売されるとはいえ、デュカトのカーゴスペースの巨大空間を見ていると、他にも楽しみ方はいろいろありそうです。荷室部分の内寸は、全長2960mm×全幅(最大)2000mm×全高1970mm。ただしリアタイヤのホイールハウスが飛び出ている部分を測ってみると、幅は約1420mmでした(誤差はありそう)。
欧州のカーマニアの中には、こういった商用車に小さなクラシックカーを積載して、サーキットやラリーに参加する人も多かったりします。同じフィアットで、21世紀バージョンの「500」は全幅1625mmなので残念ながらデュカトに積むことはできませんが、1950~70年代の2代目「ヌォーヴァ500」なら全幅1320mmで積載できそうです。ワイドトレッド化したアバルト仕様などは要検討ですが……。
ほかにもイソ/BMW「イセッタ」も積めますし、小さなクラシック・レースカーや、現代のカートもいけそうですね。デュカトくらい荷室が大きなクルマだと、キャンピングカーならずとも、アレンジ次第でさまざまな遊び方ができそうです。
■specifications
FIAT DUCATO L2H2
フィアット デュカトL2H2
・車両価格(消費税込):512万5000円
・全長:5410mm
・全幅:2050mm
・全高:2525mm
・ホイールベース:3450mm
・キャビンスペース全長:2960mm
・キャビンスペース全幅(最大):2000mm
・キャビンスペース全高:1970mm
・車両重量:2110kg
・エンジン形式:直列4気筒MultiJet3ディーゼルインタークーラー付ターボ
・排気量:2184cc
・エンジン配置:フロントエンジン
・駆動方式:フロント駆動
・変速機:トルクコンバーター式9速MT
・最高出力:180ps/3500rpm
・最大トルク:450Nm/1500rpm
・燃料タンク容量:75L
・サスペンション:(前)マクファーソンストラット、(後)車軸式
・ブレーキ:(前&後)ディスク
・タイヤ:(前&後)225/75R16CP
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