憧れのEK9を奇跡的に購入するも波乱だらけ
AMWの母体である交通タイムス社から、クルマ好きのクルマ持ちが集まった自動車部。部員一人ひとりにマイ・カーを熱く語ってもらう連載形式をスタートしました。今回は、EK9型ホンダ「シビック タイプR」を所有するWEB CARTOP編集部の井上悠大さんです。購入前から購入後半年くらいまでのストーリーが波乱続きで、胃もたれ必至なレベルだとか。読む覚悟だけある人はしばしお付き合いあれ。
とにかくホンダのクルマに乗りたかった
今回紹介するこのクルマは、もう多く語らないでもAMWを愛読する読者諸兄には説明不要だろう。筆者唯一の資産でもあり何よりも大切な愛車ホンダ「シビック タイプR(以下:EK9)」だ。大袈裟でも冗談でもなく、世界中に今日まで存在する3ドアハッチバックのなかでも5本の指に入る最高の格好良さを持つのが、シリーズ6代目となるこのミラクルシビックだと思っている(なお、残りはワンダーシビック・グランドシビック・スポーツシビックだと勝手に思っている。もう1台は検討中)。
このクルマがいつ頃好きになったのは、おそらく今から15年ほど前である中学生だったと思う。まだ当時はテレビの地上波でF1中継などをやっていて、ニワカながらたまに見ており、「F1=ホンダ=エンジン」というのと、マンガ「頭文字D」が小学生の頃から好きだったこともあり、「AE86トレノ」を含む3ドアハッチバックを非常に好んでいた。そのなかで「3ドアハッチバックでホンダのエンジンを載せた速いクルマはシビックしかない!」となったワケだ(うろ覚え)。
なかでも、このEK9はゼロ戦のように研ぎ澄まされた軽量なボディと「エンジンのホンダここにアリ」と言わんばかりのスペシャルな心臓から、それはもう輝いて見えた。ゲームなどのバーチャル空間で操っていたが、やはり実車が欲しくなるのは人間の性。いつしか憧れのクルマとして筆者の脳内に君臨した。
時は流れ、20歳で免許を取得した筆者は、最初のクルマとして買おうとしたのが「EG4」という型式を持つ5代目シビックであった。1.5LのSOHCエンジンではあるが、とにかくホンダのクルマに乗りたかったのだ。しかし、最初のクルマとしては古すぎることもあり家族からは即却下。いろいろ検討した末、手元にやってきたのは日産マーチ「12SR」であった。4年ほど所有し、MTの練習からサーキット遊び、長距離ドライブ、DIYなどを学んだ。
そして大学を卒業し就職。今から5年前の話だ。「やっと自由に使えるお金が手に入る。もうクルマ選びは誰にも文句を言わせないぞ」と意気込み、たくさん給料をもらっていたわけではないが、なぜだか全能になった気分であった。しかし、現実はそう甘くなかった。それはもうべらぼうに、シビックが予想以上に高いのだ。今ほどではないが、すでに当時から人気車種であった。なんでも良ければ買えたが、程度はそれなり。安くていいクルマなんてのは前世で徳を積まないと手に入らないのだ。
根性がないので中古車サイトで探すのはやめた。脳内はすでに「ホンダ車ならなんでもいいや。DC5(2代目インテグラタイプR)やS2000にしよう」となっていた。このときはこれらのモデルはまだ安かったせいもある。就職してから出物を3カ月ほど探し、ある程度の予算と目星をつけ、新社会人の井上が選んだ答えは「S2000」であった。そして、予算も条件も良いモデルがあったので、お店に電話して翌日見に行くことに。しかし、当日問題が発生! このS2000、閉店間際に売約済みになったそう。「俺が前世でなにをしたってんだ」と泣き叫んだのを覚えている。また愛車探しはゼロからのスタートに……。
眩しいほど綺麗な極上のEK9を発見
途方に暮れ、覇気のなくなった筆者に店員が寄ってきた。「お前は何を探してるんだ」と。そこで私は指を刺しながらこう語った。「本命は”あそこ”に置いてあるEK9です」と。そう。来店時に静岡ナンバーをつけていた眩しいほど綺麗な極上のEK9がこの店の通路に停めてあったのだ。ただ、来店客もこの日は多かったので、お客さんのクルマか、メンテナンスで預かったクルマだと思ってそれほど気に留めてなかった。しかし、このあと思い掛けない回答が店員から返ってきた。「あれ、昨日うちでクルマを買った人が置いてった下取り車ですよ。金額に折り合いが付けば“譲れるかも”しれない」
正直なにを言っているのかわからなかった。そんな出来レースがどこにあるんだと。しかもこのシビック、本当に極上車で「オドメーターは4万キロちょっと、ガレージ保管で雨ではほぼ未使用、事故歴なし、社外パーツも一流品」と文句を言いたくても文句がないほどの1台。ワガママを言うなれば、EK9は前期だと1DINのインパネで通常のカーナビがつかない点がネガティブ要素があったが、それはスマホのナビで代用できるので大きな問題ではなかった。それに、フェイスも前期の方が筆者は好みだ。
あとの問題は予算だ。今から5年前とはいえ、この程度だと筆者の当時の予算の+100万円は必要であったので、正直買えない額を言われると覚悟していた。あぁ、新卒社会人である自分を恨みたい。それと、ここの店長がコレクター気質らしく、その1台に加える予定があるかもとのことだった。それが“譲れるかも”と含みのある言い方になった理由だ。まさに“運ゲー”。ところが、ここでもまた奇跡が起こる。なんと提示した予算内で譲ってくれるというのだ。「え、じつはタイプRじゃないのでは?」と本気で疑ったのを覚えている。
そこまでくれば即決してもよかったのだが、一応は当時の人生で1番大きな買い物。1週間だけ猶予をもらってよく考えることにしたが、もう内心では購入を決めていた。後日、筆者は晴れてこのEK9を愛車として迎え入れることとなったのだ。関東から奈良県までシビックを見に行ったこともあったが、結局は地元で買うというオチに。