サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

アルファ ロメオ「トナーレ」のPHEVはジェントルに進化!?「アルファDNA」を「D」にすればじゃじゃ馬ぶりも楽しめます

8月26日から販売開始となるアルファ ロメオ トナーレ プラグインハイブリッドQ4 ヴェローチェ

ブランド初のPHEV! トナーレ プラグインハイブリッドQ4に試乗

アルファ ロメオ初のコンパクトSUV「トナーレ」は、同社が2023年上半期の世界新車販売で前年同期比57%アップという好成績を達成した、最大の功労者といえよう。2022年2月に世界初公開されたのち、日本国内では2023年初頭に1.5Lガソリンターボ+48Vマイルドハイブリッドの前輪駆動版から導入。そしてこの夏、最上級・最高性能版にあたるプラグインハイブリッドのAWD仕様車「トナーレ プラグインハイブリッドQ4」が追加デビューすることになった。

アルファ ロメオの躍進を支えたヒット作の最高性能版とは

トナーレ プラグインハイブリッドQ4は、最高出力180psを発生する排気量1.3Lの直列4気筒ガソリンターボ「MultiAir(マルチエア)」エンジンと45psの電気モーターが6速ATを介して前輪を駆動し、後輪を最高出力128psのモーターが駆動する「Q4オールホイールドライブ」を採用する。システム総出力は280psをマークし、0-100km/h加速は6.2秒、最高速度206km/h(ともにEU参考データ)の性能を発揮する。また、フル充電状態からEVモードで走行できる距離は、市街地サイクルで72kmを確保したという。

バッテリーは、蓄電容量15.5kWhのリチウムイオン式。エンジンを併用した際の航続可能距離は600km以上に到達するかたわらで、CO2排出量は最大26g/km削減できるという。EVモードでの最高速度は135km/h。バッテリー充電に関しては、出力7.4kWの急速充電器を利用した場合、フル充電までの時間は2時間30分としている。

いっぽう、「ミト」以来アルファ ロメオのアイコン的機構となってきた「アルファ ロメオDNA」システムは、従来のものから大きく変容。「D(ダイナミック)」モードを選択すると、エンジンとモーターからフルパワーが得られる。一方、デフォルトとなる「N(ナチュラル)」はパフォーマンスを維持しつつも、モーター/エンジン駆動のバランスを重視し、燃費と性能を両立する。そして、従来のDNAでは滑りやすい状況下でのコントロール性を優先する「オールウェザー」の頭文字としていた「A」は、新たに「アドバンスド・エフィシエンシー」モードへと変更。ガソリンエンジンを停止させたEV走行となる。

くわえてダッシュパネルのセンタースクリーンでは、プラグインハイブリッドQ4専用のページを追加。エネルギーフローや走行履歴が確認できるほか、充電設定のセレクトが可能となる。このスイッチ操作によりバッテリーの充電レベルを上げられるほか、減速時の回生でエネルギーを回収する「バッテリー節約」モードと、エンジンを使用して設定した目標レベル(40%+/60%+/80%+)にまで充電を行う「バッテリー充電」モードの切り替えも可能とのことである。

そして5ホールのアルミホイール、「テレスコピック」インストルメントパネル、3スポークのスポーツステアリングホイール、サインカーブ(正弦波)ヘッドライトなどに、アルファ ロメオの新しいデザイン言語が反映された内外装の仕立ては、従来のマイルドハイブリッド版と基本的には不変。数少ない違いは、左側のリアクオーターウインドウ後端に「エレクトロ・ビショーネ」なる愛称が授けられた、小さなヘビのアイコンがあしらわれることぐらいとされている。

小さいけれど、プレミアムSUVへと仲間入り?

初手から個人的な話に逸れてしまって恐縮だが、これまで筆者のクルマ所有歴の大部分は、趣味のためのクラシックモデル、あるいは日常使いの現代車ともにアルファ ロメオによって占められてきた。そして現在では、トナーレにとっては実質的な前任モデルとなった3代目「ジュリエッタ・クアドリフォリオ」を愛用中。つまりは、典型的な「自称アルフィスタ」である。でも、これまで新型車トナーレには触れるチャンスにも恵まれていなかったので、今回の試乗には大いに期待していた。

初めてじっくりと目の当たりにしたトナーレは、2019年春のジュネーヴ・ショーにて世界初公開された同名のコンセプトカーと比べてしまえば、いささか現実的になってしまった印象はあるものの、スタイリッシュであることに変わりはない。

ただ、これまでのアルファ ロメオが情熱をあらわにしたデザインを身上としていたのに対して、トナーレはES30系「SZ/RZ」をモチーフとしたフロントエンドのデザインを与えられながらも、どちらかといえばクール志向に変身を遂げたかに見える。

質感の高いコクピットに収まり、「START」ボタンを押して起動すると、エンジン音の代わりに聞こえてくるのは、シートベンチレーターのファンが発するかすかな音。撮影日はかなりの猛暑だったのだが、上級車のごとくエアコンの冷たい風が背中にあたるのは、じつに心地よい。また、テールゲートの操作もスイッチや足のつま先のジェスチャーで行う機能も備えているほか、現代的なインフォテイメント系のシステムも充実している。

つまりは、ボディサイズは全長4530mm×全幅1840mm×全高1600mmと比較的コンパクトながらも、長年アルファ ロメオの身上だったスポーティさよりは、プレミアム性を追求した高級志向に変化を遂げたと考えるほうが自然のようだ。

それとは裏腹に、起動の直後に表示が現れる液晶メーターは、アルファロ メオ往年の名作「ジュリア スプリントGT」のイエガー(JAEGER)社製速度計/回転計へのオマージュと思われるクラシカルなデザイン。また1980~90年代の「164」を意識したかにも映る、ダッシュパネル中央のエアコン吹き出し口の真下にずらりと並ぶスイッチなど、アルフィスタ心をくすぐるディテールに心を浮き立たせながら走り出してみた。

時代の要請に応えてキャラ変した、新世代のアルファ ロメオ

アルファ ロメオDNAをデフォルト設定である「N」モードのままスタートすると、まずは128psの後輪用モーターのみでの走行となるせいか、比較的おっとりとした加速感。エンジンに火が入ったのちも、筆者のジュリエッタよりも明らかに澄んだサウンドを聞かせてくれるわりには、ジェントルな印象に終始する。

これは、トルクの出し方のセッティングが燃費およびCO2削減指向となっているうえに、マイルドハイブリッド版と比べるとリアの駆動モーターやバッテリーが追加された分、ウェイトが250kg増しの1880kgに達したことも影響を及ぼしているのは間違いあるまい。

そんなプレミアム志向のジェントルなキャラクター設定は、シャシーのセットアップにも反映されているようだ。235/40R20というハイトの薄いタイヤを履いているにもかかわらず乗り心地はとても良好で、ロードノイズやコツコツ感もうまく抑えられている。

ただし、ひとたびアルファ ロメオDNAのダイヤルを回して「D」モードを選択してしまえば、状況は一変。280psのPHEVシステム総出力は伊達ではないことを、前輪をバタつかせるほどの加速性能で主張してくる。

リアサスペンションは、おそらくテールの床下にバッテリーやモーターを置くことを念頭においたのか、ジュリエッタのマルチリンク式から、よりスペース効率に優れたストラット式を採用しているのだが、やはりロードホールディングではマルチリンクに分があるのだろう。車高および重心の高いSUVの特質に、姉貴分「ステルヴィオ」譲りのクイックなステアリングも相まって、Dモードでアクセルを踏み込むと、スタビリティに優れるはずの4WDながらかなりのじゃじゃ馬ぶりを見せるのだ。

この走りのキャラの変容ぶりは、アルファ ロメオDNAの「A」モードが純EVモードへと変更されたため、ガソリンエンジン併用の「N」モードが旧「オールウェザー」寄りに守備範囲を広げる必要性に迫られたこと。そして「D」モードが、生来の速さをことさら体現するようになったためと推測される。

筆者のごとく、時代に取り残されたアナクロ的愛好家が思うアルファ ロメオからはあらゆる面で一歩踏み出し、電動化を前提とした新世代のクルマへとシフトしたトナーレ。とくにQ4は、アルファ ロメオのPHEVの嚆矢であるとともに、名門の次世代を占う重要なモデルと考えるのである。

モバイルバージョンを終了