ふたり揃って軽自動車レースにデビュー
2023年シーズンも多くのルーキーたちが参入した、東北のサーキットで開催される軽自動車だけのレース「東北660シリーズ」。サーキット走行そのものが初という人もいれば、他のカテゴリーで名を知られた実力者もいる。初参加組のなかでもとくに注目したいのが、岩手県の田中優馬さんと田中翔馬さんだ。
不利と思えるトールワゴンでもレースを楽しめる
よく似た名前を見てピンときた人がいるかもしれないが、ふたりは数分の差でこの世に生を受けた双子の兄弟。ともに子どものころからクルマが好きで、免許を取得してからはAE86を乗りまわし、仕事においてもクルマやチューニングと深く関わる人生を歩んでいる。
兄の優馬さんは自動車の整備士としてキャリアを積み重ね、弟である翔馬さんは、地元の盛岡市にマツダ「ロードスター」専門のプロショップ「ラヴィッシュモーターワークス」をオープンさせた。仕事だけではなく趣味としてのクルマ遊びも続けており、優馬さんはL175型ダイハツ「ムーヴ」にスーパーチャージャーを装着し、走りもこなせるドレスアップカーとして取材されたこともある。
過給機の付いた軽自動車を対象とした東北660ターボGPには以前から興味を持っており、エビスサーキット東コースで開催された2023年の第2戦が記念すべき初参戦となった。
サーキット走行の経験は幾度となくあるが、ムーヴのようなトールワゴンは超少数派で、同格のライバルと競える場がほとんどない。家庭の事情でスポーツカーに乗れない走り好きは少なからずいるはずで、そんな人たちに向けて「どんなクルマでも走れるし楽しいよ!」と、エールを送りつつ、初めの一歩を踏み出すきっかけを自分が作りたい。長く抱いていたそんな思いを、今回の東北660でついに実現させたわけだ。
会場ではギャラリーの反応も思った以上によく、念願だったライバルを抜くことも決勝で体験。スズキ「アルトワークス」やホンダ「S660」といったスポーツカーに速さは及ばずとも、走ることやレースを戦うことの楽しさは変わらないと再確認できる1日となったそうだ。
東北660ターボGPには2ペダル車だけのクラスがあり、過給機は純正であっても後付けであっても関係ない。優馬さんは「将来的にはトールワゴンのクラスができるくらい盛り上げたいですね」と話す。