今ではラインナップにないメルセデス・ベンツ軽自動車
2023年6月11日(日)、岡山国際サーキットにてカスタム軽自動車の祭典「KING OF K-CAR」が開催され、個性豊かに仕立てられた新旧さまざまな軽自動車が集結した。そのなかでも注目を集めていたのが、痛車仕様の「スマートK」。存在感バツグンのスタイリングを紹介します。
製作のコンセプトは純正に存在しなかったAMG仕様
「メルセデス・ベンツ製の軽自動車があった」と書いてピンとくる人はどのくらいるのだろうか? そのKカーは「ダイムラー・ベンツ(現メルセデス・ベンツグループ)」とスイスの時計会社「スウォッチ」との共同出資で誕生した「MCC社」が、1998年にリリースしたRR仕様のマイクロカー「スマート」がベースだ。
このクルマの寸法は全長2560mm、全幅1515mmで、エンジンの排気量が598cc(プラスターボ)。クルマをよく知る人なら即理解できるとおり、全幅が35mm短縮されれば、日本の軽自動車の規格に収まる。初代は登場する時代が早かったのか、売れ行きは芳しくなかった。並行輸入業者がリアフェンダーの幅を短縮(タイヤ幅も狭く)し、軽自動車として登録したことで一定の人気を得ていたこともあり、本家も同様の手法でKカーモデルの発売を決定。2001年にエントリーモデルとして日本でデビューしたのが「スマートK」というわけだ。
KING OF K-CAR MeetingにスマートKでエントリーしていたのがSπさん。その愛車は先進のパッケージと愛らしいルックスを、蛍光ブルーのラッピングと初音ミクのグラフィックでコーディネートしている。なお、ワンポイントタトゥー風のやりすぎない痛車は今、ひとつのトレンドになりつつある。
マシンメイクのコンセプトは仮想AMG仕様だ。まず、マグファクトリー製の前後オーバーフェンダーを装着。純正の3穴を5穴にする変換スペーサーを組み込み、フロントに195/40R17、リアには235/40R18のマッシブなタイヤをインストールした。AMGの5本スポークを想起させるホイールは、プロスタッフでワンオフするなど気合いが入っている。
初音ミクのラッピングはボディとシート背面に施工
外観はスマートロードスター用ヘッドライトを2セット購入し、プロジェクターランプのみを使って4灯化&リアコンビランプをユーロタイプでイメチェン。これにガレージデライトのダックテールをセットし、キュートなルックスにアクセントを添えている。
内装は外装とは逆で、黒を基調にブルーのアクセントをバランスよく添える。ステアリング、ダッシュボードはブラバス仕様に交換。一部カーボン調にペイントし、レーシーな雰囲気を演出する。高級感を与える本革シートはスマートロードスター用で、音響関係はカロッツエリアの本体とJBLのスピーカーシステムという基本構成だ。ミニマムなスペースを有効に使ってアップデートしている。
初音ミクはボディパネルだけでなく、シートの背面にもラッピング。シート背面と同じデザインを使って、フロアマットを製作するなど自分の理想を追求する。Sπさんはこのクルマだけでも3度グラフィックをやり直しているそう。ちなみに初音ミクは一定の要件さえ満たせば、自由に使うことができるため、世の中には何千、何万の初音ミクが存在するそうだ。
エンジンはブラバス仕様へと換装してパワーアップ
エンジンは出力を75ps(ノーマルは55ps。ECUも書き換え済)のブラバス仕様のエンジンを移植し、AMG仕様に恥じないようパフォーマンスも高めた。マフラーについては完全にワンオフ製作で、低中速をアップするために取り回しを工夫した。リアにそのまま出すのではなく、リアにあるエンジンから前にパイプを戻し、ボディ両サイドから排気。フィニッシュ部は「Gクラス」のAMG用を組み合わせ、迫力あるビジュアルに仕上がった。
誰もが内外装の大胆なグラフィックに目を奪われるが、中身もしっかりとカスタマイズ。走る、曲がる、止まるを含めて、ビジュアルに負けない性能をプラスしているのもポイントが高い。コーディネイトも含めてトータルバランスに優れた1台だった。