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バブルな日産「NXクーペ」はロールス・ロイスしかない装備を搭載! 未来志向の自称タイムマシンでした【カタログは語る】

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TEXT: 島崎 七生人(SHIMAZAKI Naoto)  PHOTO: 島崎 七生人/Lotus Cars

時代の先をいくスタイルとアイデアが満載だった

バブル期の国産車には自由な発想で作られた個性的なモデルが数多く存在していました。1990年1月に発売された日産「NXクーペ」もそのひとつで、残念ながらヒットには恵まれなかったものの、当時ならではの贅沢なつくりは今見ても魅力的です。当時のカタログで振り返ります。

「タイムマシンかもしれない。」肩の力の抜けたユニークなカタログ

NXクーペのカタログを久しぶりに眺めながら、そういえばこの時代に「かもしれない発言」が流行っていたのを思い出した。そんなこと聞いたことはないかもしれない……と思う人も多いかもしれない。

だが、折りしもバブル景気の混とんとした世の中を生きていく術(すべ)として、自分の意見を言ったり何かの答えや結論や見極めを求められたときに、あくまでも断定は避け、控えめに相手も自分も傷つけないようにしながら、ふんわりとした物言いで語尾に「……かもしれない」の言い回しを使う。まだ「対面」で人と合うのが当たり前だった時代ならではの処世術のひとつだ。

さしずめ今なら、メールでも何でも、ズバッと最小限の文字数で用件なり返事なりを伝えるのは割り切り、当たり前で、それは合理的だが世の中がやや殺伐としてきてしまった要因のひとつになっている気もするが……。

そこで日産NXクーペだが、このクルマのカタログはちょっとユニークなものだった。というのも、縦長のあまり見かけない判型(ということは資料室の棚からはみ出しやすい)であるうえ、昔のアナログEPレコードの両A面のように、赤と黄色の地色でどちらも表紙の体で作られていたからだ。

記憶が正しければ、当時の実車の記者発表会の席で手渡された封筒には、封筒の表面を自分に向けて中身を取り出したとき、赤い表紙のほうが自分に向いて中から出てきたから、てっきり赤いほうが正式な表紙なのだな……と筆者は判断していた。一応その方向で読み進めれば、最終の主要諸元表のページまで辿り着くことができる。そこからもう1ページめくるとページの隅に小さく「黄色い表紙へ・ワープ」と書かれていて、博物館の「順路」の立て札よろしく、そこでカタログをひっくり返して黄色い表紙のほうから見る……そういう仕組みになっていた。

どこで誰が考えた方式かは知らないが(ほかに同様の仕組みのカタログがあった気がするが具体例は思い出せない)、まあ、そういう仕掛けの肩の力の抜けたカタログだったということだ。

で、赤、黄いずれの表紙から開いても、最初の見開きに出てくるキャッチコピーが「タイムマシンかもしれない。」だった。そういえば当時のTV-CMもモーフィングを使いクルマがクネクネと曲がったりしながら動き回る、(後の映画『カーズ』のような)そんな映像だった……かもしれない。

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