あっけらかんとしたスタイルでTバールーフも選べた
NXクーペは1990年1月に「サニー」が7代目にモデルチェンジした際、同時にデビューした。先代の6代目サニー(トラッドサニー)の世代に「サニーRZ-1クーペ」が設定され、NXクーペはその後継車だったが、車名から「サニー」の名が外されたのが特徴。スタイリングもそれまでのサニークーペがセダンをベースにしながら2ドア化して差別化を図ってきたのに対し、NXクーペはパッと見た限りサニーのセダンとは2430mmのホイールベースが共通なだけで、あとはターンシグナルランプやドアハンドルに至るまで何ひとつ共通部品が見当たらないほど。いかにもバブルの時代の発想だが、だからこそここまで個性的なクルマが生まれたともいえる。
ちなみに丸みを帯びたスタイリングはまるで『スーパージェッター』(世代限定の喩え?)のようで、まさしく未来志向のタイムマシンのようだった。さらに贅沢にもフェアレディZまさりのTバールーフ仕様も用意された。NXクーペ(サニー)はもともと「セントラ」として北米市場にも投入され「セクレタリーカー」とも言われてきた。なのであっけらかんとしたスタイリングにしろ、Tバールーフにしろ、なるほどね、と思わせられる仕立てになっていた。
ドアの内部には傘の専用スペースも
一方でインテリアは、インパネなどはセダンのサニーとほぼ共通。ただし乗車定員はクーペということで4名、フロントシートはシェイプの深い専用デザインのスポーツシートを採用した。ハイテク感覚のデジタルメーター(カタログの表記より)なども備えた。
さらに改めてカタログを見ると、ドアを開けたところにフタを開けて傘を収めておける専用のスペースも。柄が真っすぐで長さも収まる専用の傘とセットという点がポイントで、じつはコレは1986年登場の3代目「パルサー」にも採用されていたもの。知人の欧州車好きは「ロールス・ロイスばりの装備」と感想を述べていた。
搭載エンジンは1.8L(SR18DE型)、1.6L(GA16DE型)、それと1.5L(GA15SD型)と、今から考えると比較的豊富に設定されていた。グレードはタイプS、B、Aの3タイプで、タイプSは1.8Lを搭載し、ハードサスペンションが標準、オプションで電子制御のスポーツオートサスが選べたほか、フロントビスカスLSDが標準装着となっていた。後期型においては運転席SRSエアバッグがオプション設定されるなどし、外観ではバンパーからボディに走っていたモールが黒からボディ同色化されるなどした。タイムマシンだったかどうかまでは当時の試乗では確認できなかったが、時代に対して少し先をいくスタイルがまあ特徴だった……そんなクルマだったのかもしれない。