没後もガスステーションは再建されて今も旅人を見守る
有言実行で翌年ゲイリーさんを訪ねると、ちょっと驚きながら「忘れてないぞ!」と。日本のお土産を渡しつつまたもや話が弾み、渡した以上のお土産をいただいてしまう。ギフトショップを併設しているので「商品なんだからちゃんと支払わせて下さい」と頼むものの、なかなか受け取ってくれず、見ていない隙にドネーションボックスに何度お金をねじ込んだことだろうか。
彼と会うことが旅する理由のひとつでもあったが、2015年1月に共通の知人から訃報が届く。70歳と早すぎる死だった。直後に再びルート66を全線走破する機会があり、主人のいないガスステーションを訪ねてみた。そのときは奥さんのレナと親族がおり「なんとか彼の遺志を継ごうと思っている」と話していたが、彼女も同じ年の5月にゲイリーさんの後を追うように他界してしまう。以降はしばらく放置され盗難の被害にも遭ったようだが、現在は娘さんご夫婦が移住し再建を果たしたとのこと。
思えば毎年の恒例行事であるルート66の旅にひと区切りつけたのは、ゲイリーさんに会えなくなったことが理由のひとつかもしれない。ただ彼の志が引き継がれたと知ったからには、やはり足を運ばないわけにはいかないだろう。ゲイリーさんにもらったシャツや帽子を身に付け、私が撮影した彼やガスステーションの写真を持って。
夫妻が並んで眠る墓標に刻まれた「Friends for life」という言葉は、ルート66の名ホストとして世界中に友人を作ったゲイリーさんの人生そのものだ。
■「ルート66旅」連載記事一覧はこちら