スポーツからクルージングまで、スーパーGTは思いのままに
アストンマーティンは新型モデルのコンセプトを「スーパーGT」とした。単なるグランドツアラーではない。リアルスポーツカーとしても成立するモデルというのが彼らの主張である。そのための動的性能向上はパワートレインからシャシー&サスペンション、各種ダイナミック制御まで多岐に渡った。ちなみに初曲がりですぐに感じた違いは主に電動パワーステアリングとワイドトレッドが要因だ。
もちろん、車体の軽快な動きそのものは大幅にパワーアップしたエンジンとDBシリーズとしては初めて搭載したeデフによるところが大きい。アストンマーティンのロードカーは現在、メルセデスAMGより主要なメカニカルコンポーネンツを得ているが、エンジン(M177)から制御技術に至るまで最新世代を供給されるようになったというわけだ。
その効果はてきめんというべきで、乗った瞬間から進化を感じ取り、乗れば乗るほどにその味わいの深さに感動する。
アストン的GTフィールから脱却した走り
ドライブモード選択にウェットとインディビジュアルが加わった。オープンロードに差し掛かって、豪華なセンターコンソールのモードダイヤルをスポーツ+に切り替える。ステアリングは驚くほどクイックになり、内に向くノーズの速さも尋常ではない。DB11よりも一気に奥まで進入でき、そこからシャープに曲がっていく。ドライバーの感覚としては、クルマが勝手に曲がっていくようだ。さらにはコーナーからの脱出も鮮やか。力強さとサウンドは別のエンジンかと思うほどに鋭い。
加速中、さらにアクセルオフ時のサウンドは同じウェットサンプM177であるにも関わらず、DB11よりも上品な爆音で、力強さとともに官能性も感じられた。全てが手の内にある感覚はまさにスポーツカーのそれで、これまでのアストン的GTフィールとはまるで違う。なるほどメーカーが新たなカテゴリー、「スーパーGT」だと主張する所以であろう。
スポーツとGTの融合が生み出す新たな魅力
もっとも楽しいばかりが能ではない。「らしからぬ」ハイパフォーマンスを味わったあと、脇の下の汗染みを感じた瞬間、冷静になる自分がいた。スポーツドライブを途中で切り上げ、モードをGTに戻す。ワインディングロードはまだ続いていたけれど、まったりとしたクルージングを楽しみたいという気分にさせる。ドライバーを煽ったら最後、どこまでも急き立てずにはいられないイタリアンGTとはそこが違う。
心を落ち着けてクルーズすれば、それはそれで意のままに走ってくれるという感覚が常にあって、心地よく旅を続けることができる。それこそ何百キロでも。そんな時、モダンになったインテリアは快適な空間を演出する。全てがドライビングの心地よさへとつながっている。スポーツとGTの新たな融合はこの老舗ブランドに全く新しい魅力を与えたようである。