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「ミニ モーク」は落下傘で投下させて戦地で使う予定だった!? 軍用車とならず洒落たアイコンとなった経緯とは【夏のビーチカー_03】

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: BMW AG/AMW編集部

残念ながらモークは軍に採用されるに至らず……

モーク(=バックボード)を軍用車として活用した場合の利点は、やはり小型軽量ということ。その特性を最大限活かすため、空挺部隊の兵士とともに輸送機からパレットに乗せたモークをパラシュートで降下させ、着地後に迅速な戦術機動を行うことを念頭に開発が進められた。そのパフォーマンスは実際に軍関係者の前で公開されたが、ここで大きな問題が発生する。

早くから舗装が整備された英国の道路。その良好な路面を前提に造られた10インチの小径タイヤを履いたミニ。このミニをベースに作られたモークは、戦場の不整地を走破するにはあまりにもロードクリアランスが不足しており、またその過酷な用途に対してはエンジンも非力だったのだ。

余談ではあるが、イギリス軍は第二次世界大戦中に「ウェルバイク」と呼ばれた折りたたみ式の超小型バイクを開発し、これをコンテナに詰めて空挺部隊の兵士とともにパラシュートで降下、実戦に投入しているが、こちらもモークのエピソードに似て大きな活躍はしていない。ともあれモークが軍に採用されるには至らず、パラシュートで戦地に降下されることはなかった。

ユニークな多目的車として若い世代を中心に流行した

イギリス軍には採用されなかったモークだったが、前述の通り1964年にはユニークな多目的車として一般市場向けに市販されることとなった。当時、若い世代を中心に世界的な流行となっていた「ビーチカー」の潮流にも乗り、こちらでは大きな成功を収めることとなる。

その後モークはイギリス本国のほか、オーストラリアやポルトガルなど海外の工場でも生産され、ベースとなったミニ同様、エンジン排気量の拡大やホイールの大径化、ハードトップの設定などの改良を加えつつ1993年まで作り続けられた。

2010年のデトロイトモーターショーに出展されたBMWミニの「MINIビーチコーマー・コンセプト」は、もちろんこのミニ モークへのオマージュである。また2017年からは「MOKE」の商標を所有するイギリスのMOKE International Limited社が、今後はEV化されたモークを生産していくという。かつても今も、ミニ モークはまぎれもなく「ビーチカー」のアイコンのひとつなのだ。

* * *

以下蛇足。1960年代当時に発売されたイギリスはディンキートイズのミニカーは、ノーマルの市販モデルのほか、パレットとパラシュートが付属する軍用モデルや、人気TVドラマ『The Prisoner(邦題:プリズナーNo.6)』に登場する劇中車のカラーリングが施されたモデルなど、実車に即したバリエーション展開が行われていた。このことから、実車を見たことのない子どもたちでもモークの成り立ちがそこはかとなく理解できていたように思う。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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