どんなふうにカスタムするか考えるだけで楽しい!
ここ数年のアウトドアブーム、キャンピングカーブームの影響もあって、東京の街中でもたまに見かけるフィアット「デュカト」。イタリア車好きとはいえ、小さいクルマばかり好んできた自分とは無縁だし、そもそもアウトドアにもそれほど馴染みがないし……触れる機会なんて絶対にない! と思っていたのだが……、あれれ、AMW編集部員が順番に試乗レポートをする「リレーインプレ」の第6弾は、まさかのフィアット デュカトだった。
じつは3代目のデュカト
フィアット デュカトの歴史は古く、初代は1981年から1993年まで生産が行われ、2代目は1993年から2006年まで販売されていた。そして3代目は2006年に登場し、マイナーチェンジを繰り返しながら現行モデルの姿となっている。
というわけで、イタ車オタクである僕にとってデュカトとは、どういうわけかそことなく近くにいた……そんな自然体の存在感を持ったクルマだったのだと、改めて思う今日この頃。
例えば、少しマニアな方なら、初代デュカトは1984年頃からランチア マルティニレーシングのサービスカーとして活躍していたのを覚えているかもしれない。当時のワークスマシンだった「ランチア ラリー」(SE037)や「デルタS4」の、タイヤやカウルをルーフラックに載せていた姿が印象的で、WRCを戦うマシンを支えるサポートカーのデュカトに注目したファンも少なくないだろう。
話は逸れたが、現行モデルは2022年2月10日にステランティスジャパン(旧FCAジャパン)が、日本市場に導入をアナウンスし、同年12月から正式発売。メインターゲットは冒頭でお伝えした通り、日本のキャンピングカー市場で、全国を網羅する5社と正規販売代理店契約を締結して販売をしている。
ペダル操作に慣れが必要
少々前置きが長くなってしまったが、いよいよ試乗するタイミングがやってきた。
まずは「デカっ!」これが路上で初対面したときの印象だ。
スペック表を確認すると、ボディサイズは全長5413mm×全幅2050mm×全高2524mmと、幅と高さが気になるサイズ。普段はコンパクトカーしか乗っていない僕に、運転できるのだろうか……と不安になった。大きなドアを開け、踏み台を駆け上がるようにしてシートに座り込む。
インテリアはじつにシンプルで、センターにエアコンスイッチとナビがあり、その並びにシフトノブがある。ステアリングにはテレスコピック調整機能のみが備わる。ドライビングポジションを合わせ、ペダル配置を確認すると、やや左を向いたアクセルペダルと間隔が近いブレーキペダルが少々気になった……。
多少の慣れが必要なのはイタリア車の特徴だから、そこはあまり気にしないようにしつつ、エンジンをかけるとディーゼルターボエンジンの音がガラガラと車内に響く。
見た目とは裏腹に乗りやすい
いざ試乗へ! ATセレクターをDに入れ、ブレーキをリリースしつつアクセルを踏むと、力強く路面を蹴り、加速をする。当初は見た目からして、少々かったるいのでは……と思っていたが、全くそんなことはなかった。
2184cc直列4気筒エンジンは最高出力180ps/3500rpm、ディーゼルだけに最大トルク450Nmは1500rpmから発生するため、強く踏み込むと驚くまでに加速をしていく。
ドライブモードスイッチは、エコ/ノーマル/パワーの3種類が用意されている。今回は空荷で移動しているため、きちんとした比較ができないが、エコモードでも十分な加速が得られた。もし機会があれば積載をした状態で運転をしてみたいとすら思えた。ちなみに、運転をしてしまえば不安要素の高さ以外は気にならなかった。
ボディがフレアしているわけではないので、両サイドのミラーで車幅だけ意識すれば問題ない。ストップ&ゴーが続く都内ならアイドリングストップが少々気になるくらいだが、コーナーリングは意外にも縦横比がいいからか「楽しいかも……」とすら感じ、いつのまにか笑顔で運転していたのは、自分がイタリア車びいきだからかもしれない。
なお安全装備は、レーンキーピングアシスト、フォーワードコリジョンワーニング(前面衝突警報)、衝突被害軽減ブレーキ(歩行者検知機能付)、ブラインドスポットアシスト、リアクロスパスディテクション(RCPD)、トラフィックサインレコグニション(TSR)、ドライバーアテンションアラート、リアパーキングセンサー、リアパーキングカメラ、ヒルディセントコントロール(下り坂での走行を補助するシステム)といったように十分に充実している。
とはいえ、気になる部分もあった。ルームミラーはルーフ部分後端に設置されたカメラに接続された、デジタルリアビュールームミラーになっている。細かい部分ではあるが、このカメラのセッティング、設置位置の高さゆえ下の方の死角が大きめで、アングルをやや下向きにしないと後ろにビタ付けされたクルマやバイクに気が付かない状態もありうるので、注意が必要だ。
試乗を終えて、自分が感じていた以上に乗りやすく、(高さ以外は)気を使うことがないという事実がわかり、乗ってみないとわからないとあらためて痛感した。もし気になる方は、可能ならぜひご自身の住んでいる環境で試乗してみてほしい。
もしもモディファイをするなら……
デスクに戻り、この原稿を書いているがいまもデュカトが気になって仕方がない。もしも自分が所有するならどんなモディファイをしようか妄想が膨らんでいる。例えばエクステリアは、前半で触れたランチアマルティニレーシングカラーにするのもよし、信頼のおけるトランスポーター的な雰囲気が出る。
もしかすると小さなクラシックカーなら入るかも! と思い、荷室寸法を調べてみると、室内長は2960mm×室内幅2000mm×室内高1970mmと、サイズで言えばフィアット500(2代目)の全長は2979mmなので入らない。
ならばトランスポーターとして使用するというよりは、レーシングカートやオートバイを載せたサポートカーとして使用するのが良さそうだ。またクラシックラリーのサポートカーとして予備部品や工具を積んで移動するのもアリかもしれない……。
じつは上記がプラン1。もうひとつ考えているのが、サウナカーとしての利用だ。
ここ数年のアウトドアブームとサウナの相性が抜群で、テントサウナが流行っているが、じつはサウナカーもキャンピングカーイベントなどで見かけるようになってきた。主なベースは軽トラックやトヨタ「ハイエース」、日産「キャラバン」といったワンボックスだが、あえてデュカトの広大なスペースを利用するのはどうだろうか。
前述の通り、動力性能に不満がないため、山奥にある冷水を求めて向かった場所の急な勾配に直面しても、450Nmのトルクの太さがあればへっちゃら! たとえ長距離でも疲労度が少ないシートに身を預け移動することができるデュカトならではのアイデアではないだろうか。
屋根には煙突用の穴と、給気と排気の穴を設け、室内は全面ヒノキ貼り、サウナストーブはコンパクトでありながらロウリュができるMOKI製のMS30かHARVIA製のM3でカラダをじっくり温め、川でクールダウン。フィンランドのサウナ文化に極めて近い楽しみ方ができる。
もっとも車両価格512万5000円(消費税込)+サウナ仕様にする改造費がいくらかかるかが問題ではあるが……。