バギーともジープ系とも違う、ホンダ独自の多用途カー
かつて1950年代から1970年頃にかけ、自動車史の中に小さいながらひとつのムーブメントを形作った「ビーチカー」と呼ばれるジャンルのクルマたち。その多くは量産実用車のコンポーネンツを利用して生み出された派生車種だった。今回は、ホンダが1970年に発売したユニークな軽オープン、「バモスホンダ」を当時の写真で振り返る。
びっくりするような話題を次々と提供してくれたホンダ
古くからのファンにとって、ホンダの魅力とは良い意味での「予測不能」という部分にあったのではなかろうか。戦後生まれの若いメーカーが突如モータースポーツの最高峰F1に挑戦し、同社初の市販四輪車はミッドシップに4気筒DOHCエンジンを搭載した軽トラック、「T360」。さらに初の市販乗用車がオープン2シーターの「S500」。軽自動車市場の勢力図を一気に塗り替えた「N360」。そして商業的には成功しなかったものの、強制空冷エンジン搭載の意欲作「1300」シリーズと、びっくりするような話題を矢継ぎ早に提供してくれた。
そして今回のお題もまたいかにもホンダらしい1台、「バモスホンダ」だ。車名とブランド名をひっくり返した命名方法は、2輪では「ダックスホンダ」などの例もあるが、ホンダの4輪車としてはこちらが唯一である。後年バモスの名前は軽バンとしてリバイバルしているが、そちらは普通に「ホンダ バモス」である。
何にも似ていないユニークなデザイン
バモスホンダのデビューは1970年。ホンダの軽トラックとしては2代目となる「TN III 360」のシャシーにオープントップの簡易ボディを載せた成り立ちは、同時期にデビューしたダイハツ「フェローバギィ」にも通じるが、あちらがアメリカ発祥のデューン・バギーを再現しようとしたのに対し、こちらはよりホンダ独自の「ノリモノ」としてデザインされており、その姿は何にも似ていないユニークなものだ。ボディもFRPではなく一般的な鋼板。
当時のプレスリリースにはこう書いてある。
「バモスホンダは、乗る人のアイデアによって、用途の範囲が無限に拡がる車です。ドアのないユニークなスタイルで乗り降りが簡単。シャープな機動力、タフなエンジンと足まわり。スピーディなビジネス活動に最適の設計です」