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昭和の傑作「バモスホンダ」は誰のためのクルマ? 仕事からレジャーまでこなす新時代の軽自動車でした【夏のビーチカー_06】

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 本田技研工業/長尾 循

3種のバリエーションがラインナップ

バモスホンダには2シーター・350kg積みの「バモス2」、セカンドシートを備えた4人乗りの「バモス4」、そしてリアの荷台まで幌でカバーできる「バモスフルホロ」と、3種のバリエーションが用意された。

いずれのモデルもドアは持たず、かわりに簡素なガードパイプが備わる。ドアも屋根も持たないクルマゆえのハンドルロック式盗難防止装置や、横転時の乗員保護のためのロールバーも全車共通の装備だ。

さらにインパネのメーター類やシートは防水加工が施され、アウトドアでのラフな使われ方にも対応している。フロントパネルに取り付けられたスペアタイヤは、万一の事故の際に緩衝材としての役目も持たされていたが、その見た目はフォルクスワーゲン「T2バス」(通称レイトバス)のキャンパーを連想させる。

実用車でもあり欧州由来のビーチカーに近いキャラクター

見ようによってはヘビーデューティなミリタリービークルのようでもあるバモスホンダだが、小径タイヤを履いた360cc・2WDの軽トラックがベースである以上、その外見とは裏腹に本格的な悪路走破性は備えておらず、これはやはり当時のプレスリリースにもある通り、「特に警備用、建設現場用、工場内運搬用、電気工事用、農山林管理用、牧場用、その他移動をともなう屋外作業、配達など機動性を特に必要とする仕事にピッタリの車です」ということになろう。

同時期の同社バイクに例えれば、バモスは「ハンターカブ」であって「エルシノア」ではないといったところか。その意味ではこのバモスホンダ、欧州由来のビーチカーのキャラクターに近いとも言える。

当初は月販2000台が予定されていたが、結局1973年の生産終了までに生産されたのは総計2500台ほどと言われる。しかしその製造された期間や生産台数から考えれば、いまなおバモスホンダの知名度は高い。それは折りからの「レジャーカー・ブーム」でこのバモスが多くの媒体に取り上げられ、ミニカーやプラモデルなどの玩具も数多く模型化され、さらには特撮TVドラマの劇中車のベースとなったりと、当時を知る人々にとっては馴染み深い存在だったということもあろう。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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