先見性と反骨精神を兼ね備えたランボルギーニのウルトラGTモデル
アウトモビリ・ランボルギーニから、「Lanzador(以下、ランザドール)」のコンセプトモデルが2023年8月のモントレー・カーウィークで発表された。高性能EVで2+2シーターのGTでありながら、ランボルギーニ独自のDNAには忠実なまま、クラス最高峰のスポーティさと運転する愉しさを提供するランザドールの詳細をお伝えしよう。
ランボルギーニの電動化計画の一環
ランザドールは、ランボルギーニが市販するピュアEVのコンセプトカーで、2021年にアウトモビリ・ランボルギーニ社が発表した持続可能性への道程を示した電動化計画および脱炭素化に向けたロードマップに沿ったモデルになっている。先に発表されたV12プラグイン・ハイブリッドである「レヴエルト」に続いて、2028年から製造されるシリーズモデルとして、ランボルギーニが進む未来を具現化したものである。
当然ながらBEVであっても、圧倒的なパフォーマンスや駆る愉しさはこれまでのランボルギーニ以上であることは間違いないだろう。その上で、日常使いも難なくこなせる上質なGTとしての役目を与えられたのが、このランザドールなのだ。ウルトラGTという新たなカー・セグメントを打ち立てたモデルながら、初のHPEV(ハイパフォーマンスEV)であるレヴエルトの超高性能な要素と、「ウルス」のSUVとしての汎用性を併せ持っていることが特長だ。
電動化は制約ではなく、パフォーマンス向上の機会
ランボルギーニはHPEVの開発にあたって、電動化とは制約ではなく、パフォーマンスと操作性を高めるための理にかなった機会だと捉えている。
EVだからといってその性能においては一点の曇りもなく、パワー、ドライビング・プレジャー、パフォーマンスについての妥協は一切なく、毎日楽しむことができる電気自動車だとランボルギーニは断言する。
高出力の電気モーターがあらゆるコンディション、路面、ドライビング・スタイルにおいて、常時完璧な走りとパワーを保証してくれる。コーナリングではダイナミックな挙動を実現するために、アクティブe-トルクベクタリングがあらゆる状況に応じた調整と適応を非常に細やかに行ってくれるのだ。もちろん、ハイパフォーマンスな走りに追従すべく動力源として新世代の高性能バッテリーを採用しているため、長距離走行での充電切れの心配も無用だ。
また、ハードウェア面のみならず、ソフトウェアやコントロール・システムにおいても妥協はない。「feel like a pilot」のコンセプトのもと、ドライバーは走行中にステアリング上の制御装置を使って自らドライブ・システムを調整することができる。より積極的にクルマの動きに働きかけ、自分好みの特性を持ったクルマに作り上げることも可能だ。
EVにとって空力こそ命
EVにとって重要なのが、エアロダイナミクスである。スーパースポーツカーと比較しても極めて大きな役割を担っている。エアロダイナミクスによって、1回のバッテリー充電で走行可能な距離を延長し、同時にパフォーマンスを向上させることができるからだ。ランザドールでは、高速コーナリングに必要となる正確なダウンフォースや、最高速度域における空気抵抗を可変的に調整することが可能で、状況に応じて最適化された最高のパフォーマンスでランボルギーニを駆ることができる。
ランザドールに採用されたアクティブ・エアロダイナミクス・システムは、フロントのエアシャッターと可動式スプリッターが使われ、展開するとブレーキの冷却ダクトと冷却羽根が開く。前方のSダクトは、ホイールハウスの換気とエア・カーテン用の隠しルーバーとともに、モード設定に応じてダウンフォースを増大させる。
また、ランボルギーニは排気口を使って、高速走行時にホイールアーチの動圧によって車両前方が持ち上がる現象を抑えている。そのため、ルーバーが目立ちにくくなっていて、さらなる空気抵抗の発生を抑えてダウンフォースを増大させることができる。ドライブモードに応じたダウンフォースの増大や空気抵抗の軽減によって、つねに最高のパフォーマンスを発揮するのだ。
内燃エンジンのスポーツカーを超えた走り
駆動面については、アクティブ・サスペンションを採用している。可動型リア・アクスルやエア・サスペンションなどのアクティブ・シャシーによって、ランザドールはあらゆる路面状況に合わせた最適な走りを実現した。またドライバー自身の調整により、前回設定したスタイルで走行することもでき、走りの選択権はドライバーに委ねられる。さらに、2基のモーターによる左右で異なるトルク配分や、ホイールスピード・コントロールによって、内燃エンジン搭載のスーパースポーツカーと比べても新たなレベルに達し、比類なき走行体験を享受できるという。
ランボルギーニが唯一無二の存在であり続けるデザインワーク
エクステリアは宇宙船から発想を得たというだけあって、大胆で意外性がある。引き締まった美しいラインは、「セストエレメント」や「ムルシエラゴ」、「カウンタックLPI800-4」といった伝説的モデルを継承した真のランボルギーニにふさわしく、緊張感みなぎるスタイルに仕上がっている。全高は約1.5mでありながらも、地を這うような低プロポーションなスタイルがいかにもランボルギーニらしい。
ショートノーズのボンネットの下にはトランクが隠されていて、大型のガラス製テールゲートは大きく開く仕様。後部座席は調整可能でリアのラゲッジ・ルームは可変式になっているなど、ショッピングやスポーツ、趣味といった日常の足として使ったとしても、荷物の収納に困ることはなさそうだ。
エクステリアと同様に宇宙船から着想を得たインテリアは、「ウラカン・ステラート」からもインスピレーションを受けたもので、Y字のセンター・コンソール・ブリッジがまるでジェット機のコクピットを思わせるつくりだ。そのドライビング・ポジションに収まると、スタート直前のレーサーさながらにドライバーの気分も昂るに違いない。また、創業当初からランボルギーニのデザインを特徴づけるY字型や六角形といったアイコニックなデザイン要素は、室内に限らずリアのライトなど随所に取り入れられている。
ランザドールは未来戦略の一環であり、「走行研究」だった
ランボルギーニは長年、持続可能な生産とCO2の削減にフォーカスしてきた。その結果、サステナブルレザーや再生カーボン、再生プラスチックといったサステナブルな素材を本コンセプトカーでも多用する。さらなる未来戦略の一環としては、2024年までにすべての製品領域での電動化を予定している。つまり、このモデルはサステナブルな未来に向けたランボルギーニの「走行研究」でもあるというわけだ。もちろん市販モデルであり、2028年からデリバリーされる予定。このランザドールが示すのは、ランボルギーニが向かう未来への答えでもある。
この新しいコンセプトモデル・シリーズとともに、今後ランボルギーニからはハイブリッドエンジンを搭載したスーパースポーツカーや、プラグイン・ハイブリッドの次世代ウルスといった、新時代の革新的なモデルが投入されていくことになるだろう。