小型サイズのF40、その評価はいかに?
いわゆる「チルドレンズ・カー」あるいは「ジュニアカー」と呼ばれる、一応は子ども向けというフォーマットで作られつつも、その実は裕福なコレクター向けに作られたとしか思えないほどに高度な「小さな名車たち」が、海外の一流オークションにおいて続々と高値落札されている事実は、もはやコレクター向け市場では周知のことといえよう。さる2023年8月17~19日、RMサザビーズ北米本社が開催した巨大オークション「Monterey 2023」にも、小さなフェラーリF40「Fレーサー・ジュニア(F-Racer Junior)」が出品されたのだが、じつはこのジュニアカーは、2022年にも別の個体が出品されていた。
柄は小さくとも本格的なつくり
1990年代半ば、ルカ・ディ・モンテゼーモロ元会長がフェラーリの実権を完全掌握し、その商標はもちろんクルマたちの肖像権までもコントロールするようになる以前、フェラーリF40は「キッズカー」や「ジュニアカー」のモデルとしても大いに引用されていた。
「F40っぽく見える」小さなクルマたちは、乳幼児がまたがって遊ぶキッズカーはもちろん、大人のコレクション対象にもなり得るような精巧なジュニアカー(ないしはチルドレンズ・カー)としても製作されていたことを、筆者もおぼろげながら記憶している。
今回のRMサザビーズ「Montley」オークションに出品された「Fレーサー・ジュニア(F-Racer Junior)」は後者に属するもの。オークションハウスのWEBカタログでは、製作された時期やメーカーなどに関する情報は記されていないものの、写真で見る限りはコレクターの審美眼にも耐えうる仕立てとされた1台である。
製作台数はごく少ないと思われるFレーサー・ジュニアは、オリジナルのフェラーリF40の約3/4スケール。全長2.6m×全幅1.6mという、子ども用としてはけっこう大きなサイズ。車両重量は250kgとのことである。
カタログを見ると、フレームはかなり立体的でしっかりとした作り。ミドシップに搭載された排気量270ccのガソリンエンジンに、ファイナルギア比2:1のギアボックスを組み合わせ、子ども用を標榜しつつも最高速度は35マイル(約55km/h)に達することができたそうだが、任意でリミッターを作動させることも可能とされていたという。
また油圧式ショックアブソーバーやコイルスプリング、リアのディファレンシャル、油圧ディスクブレーキ、そしてウィッシュボーン式独立サスペンションなど、本物のF40さながらのメカニズムもおごられていた。
いっぽう、子ども2人または大人1人が乗車可能なボディはFRP製で、本物のF40と同じくレキサン樹脂製のスリット入りリアウインドウ+チルト式リアカウルなどもF40っぽい。さらに前後のホイールも、本物のF40のO.Z.社製3ピースアロイを、当時としては可能な限り再現しようとしたことがうかがわれる。
さらにインテリアもかなり作り込まれたもので、2座のミニバケットシートは、本物のF40に採用されたOMP社製バケットシートにも似た、赤い不燃性ファブリックで張り込まれる。また、ダッシュパネルもザックリとした質感とダークグレーのカラーがホンモノを彷彿とさせるファブリックが張られ、実際に機能するメーターやイグニッションキーが取り付けられている。