ミズノのドライビングシューズを実際に試してみた
以前、筆者自身が試してきたドライビングシューズ遍歴を紹介させていただきました。そのときには現在使用しているアディダス「カントリーOG」を中心に話を進めていったのですが、今回はついに、ミズノ「ベアクラッチ」を手に入れましたので、その使用感をメインにお話させていただきたいと思います。
従来のドライビングシューズにありがちな欠点は改善されている
ベアクラッチは、昨年発売されたミズノのドライビングシューズです。開発コンセプトは「人とクルマと街をつなぐ」というもの。ドライビングシューズにありがちなペダル操作に主眼を置くあまり、街を歩くとソールの硬さから疲労感が高まる、というものではなく、普通に歩くことができ、かつペダル操作もしやすい、という多面性を狙ってつくられています。
そんなベアクラッチを手に入れるにあたって、協力してもらったのは東京・八王子にある「ディージャック」でした。ここはヘルメットやレーシングスーツ、レーシングシューズなどとともにベアクラッチも在庫しているため、試着が可能です。そこで試着してみたわけですが、ここで少し驚いた出来事がありました。
試着してから購入すべし
筆者の靴のサイズは、通常26.5cmです。しかしアディダス・カントリーOGの場合は、靴のスリムさから27.0cmを履いています。ベアクラッチも見た目はスリムですので、まずは27.0cmを履いたのですが、これではブカブカだったのです。おそらくは見た目とは違い、幅に余裕をもってつくられているようです。日本人の標準的な足型に沿った設計、ということなのでしょう。
そこで次に26.5cmを試したのですが、それでもまだ、幅には余裕があります。結果、今回選んだのは26.0cmでした。これだと幅はわずかに圧迫感がありましたが、シューレースを調整することでその間隔は緩和できましたし、履き慣れればアッパーの合成皮革が多少は伸びるだろう、と考えたのです。つま先も26.0cmだとほぼぴったりで、小指側の圧迫感もなく、いい感じに収まりました。そう考えると、これは通販ではなく、試着してサイズを決めたほうがいいのではないかと思われます。
ゴム製シューレースへの交換がおすすめ
さて、実際にベアクラッチを手に入れてからまずおこなったのは、ゴム製シューレースへの交換でした。これは純粋に、脱着するときにヒモを結ぶのが面倒、ということからです。こうすることでフィッティングの調整もラク、ということもあります。そこで気付いたのは、シューレースを通す部分が最上部をのぞいて内側に装備されている、ということでした。そうなっていることで、アッパーが足にフィットしやすくなっています。ここらへんはサッカースパイクと同じ考え方なのかもしれません。
ペダルからのフィードバックは良好
では、実際に履いてみたインプレッションをお届けしましょう。まず運転時ですが、踵の収まりが良く中でずれないので、踵を固定してのペダル操作がしやすくなりました。ソール部分からのフィードバックもよく、ペダルに触れている感触もきちんと伝わってきます。この部分は他のドライビングシューズに引けを取らないものといえるでしょう。ヒール部分の内側が若干硬めとなっているのも、ブレーキペダルに対して真っすぐ踏める位置にヒールを固定し、右につま先を開いてアクセルペダルを踏むという動きを、自然なフィーリングでサポートしてくれます。
街を歩いたときの疲労感にも不満はありません。見た目上はソールが薄めなので、一般的なドライビングシューズにありがちな硬さを感じるかと思いがちですが、クッション性はありますし、たとえば点字ブロックを踏んだときのフィーリングも、一般的なスニーカーに近いものでした。すでにこのベアクラッチは、取材や買い物などに使い倒していますが、足が疲れる、と感じたことはありません。
履くときに気をつける点
次に、ベアクラッチを使っていて気になった点をお伝えしたいと思います。まずひとつ目は、ベロが柔らかいということです。ペダル操作はつま先を引き上げる動きをしますから、ベロが硬ければその動きを阻害する、だからベロは柔らかくする、ということはわかります。実際、ベアクラッチはつま先を引き上げる動きも非常にやりやすいものとなっています。
しかし靴を履くとき、ベロが中に押し込まれやすい、というのは気になります。可能であればもう少しだけベロを長くしてもらうか、あるいはストラップのようなものを付けてもらえれば、そこを引っ張りながら履くことでベロが中に押し込まれるのを防ぐことができるのでは、と思います。
街歩きは快適だけど、路面の熱が伝わりやすい
ふたつ目は、路面の熱が伝わってきやすいと感じられる部分です。ソールはクッション性はありますが、物理的には薄いものとなっています。それが原因かどうかはわかりませんが、真夏の直射日光下を長時間歩いていると、地面の熱さが感じられるようになってきました。ただ、日陰に入って少し経ったあと、次に日なたを歩くときには、しばらく経たないと地面の熱さが感じられませんでした。ソールの素材、あるいは構造的に、熱の吸収と発散が素早いのかもしれません。ただ、地面の熱さを感じるとはいっても、その熱が靴の中にこもる、ということはありませんでしたので、実用上の問題とはならないと思います。
そのソールに関してですが、濡れた路面で滑る、ということはありませんでした。耐油処理されたピットなど、濡れていると靴が鳴りやすいところで音が出る、ということもありません。そのため雨の日にソールが濡れたまま運転をしても、ペダルが滑るということはなく、普通に操作できます。これは日常使用と運転のしやすさを両立させるときに大事なポイントだと感じています。
これまで履いたドライビングシューズの中でも最上位
総合的に見て、ミズノ・ベアクラッチはこれまで履いてきた靴の中でも最上位に位置するものではないかと感じています。あとはどのくらいの耐久性があるのか、ですが、これを検証するには最低1年は履き続けなければいけないでしょう。その部分についてはまた後日、お伝えできればと思います。
次回はやはり日本製のドライビングシューズ、ネグローニのインプレッションをお伝えしたいと思っています。ネグローニは筆者自身は所有していませんが、みなさんご存知の山野哲也選手と、AMW編集部にも愛用者が複数名いることから、ご両人に使用感をうかがっていこうと思っています。