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新車購入から29年で走行2.8万キロ! 世界限定220台のランチア「デルタ」の極上個体はガレージ保管・冬場冬眠でした

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TEXT: 長尾 循(NAGAO Jun)  PHOTO: 長尾 循

まだまだヒストリックカーの名作が潜んでいる新潟

新潟県で2026年の開通を目指し工事が進められている難所「八十里越」。今からその機運を盛り上げていこうと、2023年7月30日(日)に開催されたのが「いい湯らてい夏フェス」だ。その目玉企画となったのが「ノスタルジックカー展示」と題された、ヒストリックカーのパレードラン&展示イベント。県内から集まった21台のヒストリックカーが、多くの来場者の注目を集めていた。

「ランチア デルタ インテグラーレ エボルツィオーネIIジアッラ」はマニア歓喜の呪文

小さな子連れのファミリー層にもアピールするようにという趣旨で、選ばれたクルマは生産国も年式もバラエティに富んだものとなっていたが、鮮やかな黄色いボディで来場者の大きな注目を集めていたのがこちらのランチア「デルタ」だ。

知らない人が見れば単に「綺麗な色の5ドア・ハッチバック」かもしれないが、クルマ好きにとってはとんでもないスペシャル。1994年式のランチア「デルタ インテグラーレ エボルツィオーネIIジアッラ」である。

世界ラリー選手権(WRC)で1987年から6年連続、6度のマニュファクチャラーズ・チャンピオンに輝いた最強のラリーカー、ランチア デルタ。WRCの第一線から退いた後もその人気は衰えず、市販モデルは1993年にエボルツィオーネからエボルツィオーネIIへ進化を続けた。

「やはりWRCでの活躍を見て、ずっと憧れていました。そのヒストリーはもとより、迫力のブリスター・フェンダーやリアのルーフに設置されたスポイラーなどの外観まで、全てが気に入っています」

と語るのはオーナーの斉藤智行さん。この時期のデルタはすでにモデルライフ末期となり、その伝説を慈しむようにいくつもの限定車がリリースされたが、この鮮やかな黄色いボディのエボIIは「ジアッラ」(イタリア語で黄色の意)と呼ばれる限定車で、1994年に全世界で220台がリリースされたものだ。

新車購入から30年近くガレージで丁寧に保管

「それまでは国産の2ドア・クーペに乗っていたのですがデルタへの思いを断ち切れず、このジアッラがリリースされた1994年に新車で手に入れました。自分にとってこのクルマが初の左ハンドル。それ以来ずっと大切に乗り続けています」

と語る斉藤さん。新車で購入以来ガレージ保管、雪が積もる時期は「冬眠」させつつ29年。オドメーターは未だ2万8000kmの極上コンディションだ。

「普段はあまりイベントにも出ないんですが、今回は知り合いに声がけいただいたものですから……」

というから、この日斉藤さんのランチア デルタ インテグラーレ エボルツィオーネIIジアッラを見ることができた来場者は、まさに眼福だったのである。

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  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 長尾 循(NAGAO Jun)
  • 1962年生まれ。デザイン専門学校を卒業後、エディトリアル・デザイナーとしてバブル景気前夜の雑誌業界に潜り込む。その後クルマの模型専門誌、自動車趣味誌の編集長を経て2022年に定年退職。現在はフリーランスの編集者&ライター、さらには趣味が高じて模型誌の作例制作なども手掛ける。かつて所有していたクラシック・ミニや二輪は全て手放したが、1985年に個人売買で手に入れた中古のケーターハム・スーパーセブンだけは、40年近く経った今でも乗り続けている。
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