現行タフトの前世のような、時代を先駆けたクルマだった
今思えば、「ネイキッド」は同じダイハツの現行モデルである「タフト」の生まれ変わる以前の姿、あるいは少し離れた前身といってもよかったのかもしれない。ただし今のタフトのようにSUVにカテゴライズされたわけではなく、どちらかといえば分類しづらいニッチなクルマ……そんな印象があった。
自分仕様に自由にイジれることも売りだった
「裸の」「剥き出しの」、そんな意味をもつ車名だったネイキッドが登場したのは1999年11月。当時のダイハツは「We do COMPACT」のスローガンのもと、軽自動車を核としたユーザーにとって魅力のあるスモールカー作りに力を注いでいた。その中で前年の1998年に軽自動車が新規格に移行したことにあわせて登場してきたのがこのネイキッドだった。
ちなみにネイキッドは1997年の第32回東京モーターショーに「ネイキッドX070」として登場。このときのショーモデルは規格が新しくなる前に作られたことから全長3295mm(市販車は3395mm、以下同)×全幅1395mm(1475mm)×全高1550mm(1550mm)、ホイールベース2300mm(2360mm)と、実際の市販車よりもボディサイズはひとまわり小さいものだった。だが基本デザインはショーモデルと市販車とでは、全幅のイメージとディテールが部分的に異なる程度。スタイルとしての基本的なアイディアはショーモデルの段階でほぼ固まっていたのだろうと見ることができた。
「使い勝手がいい。自分勝手がいい。」はネイキッドのメインコピーだったが、なるほど言い得て妙なコピーだと思わせられた。見るからにちょっと変わったルックスのネイキッドは、実用前提のクルマだっただけでなく、自分仕様に自由にイジれることも売りとしていたのだった。
むき出しのネジやヒンジにもしっかり機能があった
外観は「タフ&シンプル」にまとめたといい、そのとおりといった感じ。ボクシーなところから初代フィアット「パンダ」を引き合いに出す声もあった。箱形でフロントガラスがフラットなところはそうだったかもしれないが、パンダのほうがサイドウインドウは立っていたし、もっとアッサリした佇まいだったようにも思う。
ではネイキッドはどうだったか? というと、アッサリの反対語を直接使うのは語弊があるとして、ディテールに凝った風だった。ただしそのディテールは機能があってのことで、たとえばバンパーコーナーやグリルはトルクスネジが露出しており、このネジを外すことで、オーナーが自分でバンパーを交換できるようになっていた。また左右の4枚のドアについても、よく見るとヒンジが露出しており、このことで前後ドアともほぼ90度(正確には85度)まで大きく開けられるようになっていた。万一モリブデングリスを自分で差したら黒くにじみ出て見えてしまわなかったかどうかまでは、実車で確認したわけではないのでわからなかったが……。
それとドアパネルが前後で同じデザインだったことも特徴だった。実際には窓枠の部分が違うのは言うまでもないが、合理的な造りを象徴するデザインだった。
なお外観については純正アクセサリーのカタログにアウトドアとレーシングの2つのテーマでまとめた用品が紹介されていた。で、この原稿を執筆するにあたり気がついたのだが、レーシング風の用品の紹介の中で「ロゴステッカー」とあるセットに「CIBIÉ」、「HELLA」、「BOSCH」のブランドのロゴステッカーを発見! 24年の時を経ての気づきだが、どういう経緯でダイハツの純正アクセサリーとしてこの設定が可能になったのか、今となっては気になるところではある。