ソフトトップ仕様は全車MTのみの設定
スタイリングは、前後フェンダーに抑揚を持たせたNB型から一転、ボディ全体を樽型のオーバルシェイプでまとめ、ホイールアーチを張り出させる形状に。初代NA型以来の、ロードスターらしいドライバーの肩口が見えるデザイン(ボディの薄さ)としている。インテリアではフラットなメーターガラス、横方向に構造体が通っているように見せたインパネなどが特徴だった。
それとNC型では、Z型に折り畳む方式のソフトトップの採用も新しかった。NB型まではトップを開くと最終的に内側が上を向いて格納状態となり、ホコリが積もらないようトノカバーをかける必要があったが、NC型はルーフ面が上になった状態で折り畳むところが合理的だった。
ルーフといえばもうひとつ、NC型登場1年後の2006年8月に発売された「パワーリトラクタブルハードトップ(RHT)」も注目された。約12秒の電動開閉スピードは世界最速(!)をうたい、3分割ルーフはトランクではなくシート背後の専用スペースに格納され、オープン時(つまりルーフ格納時)もソフトトップと同じ150Lのトランク容量を確保していたのも大きな特徴。前後重量配分50:50も確保した、ロードスターらしいスペシャルモデルだった。
また2008年12月にはマイナーチェンジが実施された。このときに外観上では、フロントグリル形状がそれまでのシンプルなオーバルから、他のマツダ車共通のデザインに寄せた「5角形グリル」となるなどして(ごく個人的な感想としては、オーバルの方がスタイルに馴染んでいてよかったのに……と思った)、全長は4mをわずかに超えた4020mmに。さらにソフトトップ仕様が全車MTのみ(5速または6速)の設定になるなどした。
記憶が正しければ、筆者がNC型ロードスターに最後に十分な距離を試乗したのは、トヨタから初代「86」が出た際に雑誌の企画で比較試乗したときだから、たぶん2012年だったと思う。NC型はエンジンが2Lになったこともあり、ロードスターらしい軽快な走りが失われた等の声もあった。だが、筆者は日常+αに乗りこなす分には大きな不満はなかったし、むしろしっとりと上質感を高めたドライバビリティが魅力にさえ思えた。ND型現行ロードスターのほんの1世代前のクルマだが、懐かしいと思えるのは、やはりそれだけ時代が流れたということなのだろう。