今後も目の離せない1台になる
AMWでは、先日7月にスイスとイタリアで開催されたRMサザビーズ主催の「カレラ・コレクション」から、いくつかのモデルをセレクトして、オークションの結果を報告した。その中でも特に注目していたのは、我々にとっても十分に落札が狙える、8気筒FRの「928」。そこでは1970年式の「928S4 」が走行距離6万8753kmのモデルが2万8750ユーロ(邦貨換算約442万7500円)で落札。ならば続く8月の「モントレー・オークション」に出品される、1993年式の「928GTS」がどれほどの価格で落札されるのかにも注目することにした。
4.5リッターV型8気筒エンジンを搭載
まずは今回のモントレーでの出品車の概要を説明しよう。年式とモデルは前に触れたとおり。1990年代を迎える頃になると、ポルシェは928シリーズの最強モデルにして最終進化版たる928GTSの開発プロジェクトを立ち上げ、まずは彼らのロードゴーイングモデルとしては最大のV型8気筒エンジン、すなわち5.4Lのパワーユニットを開発する。
928が誕生した時に搭載されていたV型8気筒エンジンは4.4L仕様であったから、それと比較すると1L近くも排気量は拡大された計算になる。結果928Sで得られた最高出力は350ps。これにはアップグレードされた5速MTと3速ATが組み合わされ、294km/hの最高速を誇った。まさに当時の高性能GTの頂点を極めた一台だ。
外観も928GTSのために、さらにスポーティなディテールが採用されている。新デザインのスポイラーやサイドミラー、専用の17インチ径アルミニウムホイールなどが装備され、そのパフォーマンスの高さを強調した。
54台のみが存在した5速MT仕様
そして928GTSは1992年から1995年までの間、生産が行われるのだが、その台数はわずか2900台強であった。出品車は1992年にアメリカに輸出されたモデルの中に、54台のみが存在した5速MT仕様。V型8気筒エンジンと5速MTのナンバーがマッチングしていること、そして新車からのオーナーがわずかに2人であることも、オークションの結果には有利に働くことになるはずだ。
ノースカロライナ州シャーロットのヘンドリック・ポルシェから新車でデリバリーされた928GTSは、いわゆる暖地仕様と呼ばれるもので、アップグレードされたデュアルゾーン・クライメートコントロールシステムと、電動サンルーフなどを装備。さらにオプションでスポーツショックアブソーバー、サイドプロテクションモール、ヒーター付き電動スポーツシート、カラードポルシェクレストセンターキャップ付き17インチホイールなども選択されていた。
現在までの走行距離は約1万8300マイル(約2万9280km)。過去1100マイルの間に、ポルシェ認定ディーラーによるメンテナンスを受け、タイミングベルト、新しいクラッチと関連するアッセンブリーパーツ、コンチネンタル製のエクストリーム・コンタクト・タイヤセット。ブレーキシステム点検、4輪アライメント等々の点検や交換を行っているのも入札者には心強いところだった。
RMサザビーズは、この928GTSに25万ドル~30万ドル(邦貨換算約3500万円~4350万円)のエスティメートを提示したが、やはりそのコンディションの良さが評価されたのか、落札価格は26万8800ドル(邦貨換算約3900万円)とその範囲内に収まった。928という後継車の存在しない高性能GT、そして1995年の生産中止からそろそろ30年を迎えようかというタイミングは、そのコンディション抜群の最終モデルに思わぬ、しかしながら誰もが予想するとおりのバリューを与えてくれたのである。