スーパーチャージャーならではのサウンド
トヨタ製を供給された、と聞くと実用一点張りエンジンを想像してしまうが、ロータスにとってはすでに使い慣れ親しんだユニットだけあって、ドライブした印象から“トヨタ”が匂い立つことはない。ロータスは自社製エンジンを作ったこともあるけれど、歴史的には他社製エンジンを好きなように調律して使いこなすことが上手かった。官能性もほどほどあって、何より十二分に力強い。マニュアルとの相性も決して悪くない。
小気味のいいミッションフィールを楽しみつつ、乗り心地の良さにも目を見張りながら、高速道路に入った。エヴォーラと同じロングホイールベース、そしてワイドトラック化が効いているのだろう。しっとりした手応えと安定した直進性を手に入れた。これまたロータスらしくないといえばそうかもしれない。前フェンダーの峰がはっきり見えるから視線と走行車線の関係が安定し、真っ直ぐ走らせやすいのだ。なにしろ1990年代以降のロータスでは、たとえ+2モデルであってもロングドライブに出かけたいなどと、思ったこともなかったのだから!
6速入れっぱなしで高速道路上はほとんど事が足りた。この辺り、さすがに実用エンジンというべきフレキシビリティの高さだ。それでいて適切な段から1つ落として右足を踏み込めば、過給器付きながら大排気量エンジンのような加速をみせる。スーパーチャージャー付きゆえサウンドは独特。ドライバーの気分を盛り上げる音であることは間違いない。加速フィールにも危なっかしい感じはまるでなく、ライバルたちと比べても遜色のないGTだった。
無事に京都に着いてからは休む時間を惜しんで、ホームであるワインディングロードへとノーズを向けた。エリーゼやエキシージほどスポーツカーでないことは、京都までのドライブが安楽であったことがよく物語っている。それでもこれはロータスの2シーターカーだ。新しいスポーツカーの楽しみを見せてくれるに違いない。そんな期待を込めて山を目指した。
エンジンの一気呵成な盛り上がり方に比べて、実際の瞬発力にはやや欠ける。ギアレバーフィールにはハードなシーンでの節度感が物足りなく感じた。この辺りはアルピーヌやポルシェに軍配が上がる。けれどもそれ以外、特にハードなコーナリングシーンにおける絶大な信頼感などはさすがにロータス製スポーツカーだと感心した。どんなカーブでもシャシーの対応が万全である、といえば大袈裟だろうか。ドライバーの技量に関係なく、路面の状態を懐深く受け入れようとする姿勢は、このクルマのスポーツカーとしての完成度の高さをよく物語っていると言っていい。
手足の操作が必要ゆえ、減速からコーナリング、そして脱出と一連の操作が上手くいったときの爽快さは何物にも替え難い。これがなかなか難しいからなおさらだ。マニュアルであるがゆえ、長く付き合えそうな1台だと思った。