シトロエンやパナール、そしてルノーまで多彩なモデルがベース車に
フランス取材行の後半はルノー「カングー」で寄り道を続ける旅となりました。初日にルノー・クラシックスを取材し、2日目から博物館歴訪の旅が始まり、最初に訪れた博物館がマノワール自動車博物館でした。ここは11年ぶり2度目の訪問となりましたが、以前にフランスの自動車博物館で出会ったF1GPマシンを紹介した記事でも紹介したように、マノワール自動車博物館は大きくリニューアルしていたのです。
それでもロードカーに関しては新たに収蔵展示されたモデルはわずかで、従来から引き続いて収蔵されているモデルが多かったように見受けられました。気になったライトウェイトなスポーツカーも「マラソン」が初対面で、一方シトロエン「UMAP」と「ブリッソノー」、そして「リスパル」の3台は11年ぶりの再会です。
これが初対面となったマラソンは、パナールの「ディナX」や「ディナZ」をベースに製作され、マラソン・コルセアと呼ばれる2ドアクーペに加えてマラソン・パイレーツの名で2ドアロードスターも用意されていました。フラットツイン・エンジンはわずか850ccで最高出力も42馬力に過ぎませんでしたが、樹脂製の軽量ボディのおかげで680kgと軽量で快活なライトウェイト・スポーツカーに仕上がりました。
一方の再会組ですがシトロエンUMAPは、「みにくいアヒルの子」と揶揄されながらも大ヒット作となり、フランスの津々浦々まで埋め尽くしたシトロエン「2CV」がベースで、エンジンは、さまざまなフラットツインを選ぶことができます。何よりも美しいボディスタイルが大きな特徴で、まさに美しい白鳥へと昇華した1台です。
ブリッソノーはルノーやオペルのボディを製造していたカロッツェリアでした。具体的にはルノー「カラベル」や、後にはオペル「1900GT」なども生産しています。そんなブリッソノーですが、自らも自動車メーカーになろうと製作したモデルがこのカブリオレ。ルノー「4CV」のメカニズム部分はそのままに、オリジナルのボディを架装したもの。やはりベースモデルよりも格段に格好良くなっているのは間違いないところ。
最後の1台、リスパルはブリッソノーと同じくルノー4CVがベースです。ただしロードモデルとしてではなくル・マン24時間レースに参戦するための競技車両として開発された点に独自性が窺えます。残念ながらレギュレーションの変更によって開発者のレイモン・リスパルがモチベーションを失い、ル・マン用のマシンに換えてレーシング・フォーミュラの開発にかじを切ってしまったのは残念でした。
このように彼の地では、ベーシックなロードカーをベースにしたスポーツカーが数多く誕生していたことが実感できました。多くのメーカーが電動化にかじを切っているようですが、今は現行車両のエンジンなど、コンポーネントを使ったライトウェイトなスポーツカーが誕生する最後の機会なのかもしれません。