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F1マシン祭りだったドイツの博物館は、展示方法にもこだわりが。「ウィリアムズ」が天から駆け下りてくる展示スタイルは圧倒されます

反対に、少数派のフェラーリは13年前と同様に、エンジンを伝統のV12からV10にコンバートした1996年のフェラーリ648、通称「F310」が孤高の座を守る恰好となっている

ドイツの博物館で見かけたF1マシン事情

今回、2023年6月末から7月上旬にかけてのフランス取材では、マノワール自動車博物館が18台のマシンをメインとした展示エリアを新たに整備していたことを筆頭に、数々の自動車博物館においてF1GPマシンの展示が増えている状況を実感したのですが、それは7月末から8月中旬にかけてのドイツ取材でも同様……いやむしろ、感覚的にはそれ以上のものがありました。今回はドイツの博物館事情を紹介します。

天から駆け下りてくるF1GPマシンに感動したジンスハイム交通技術博物館

ドイツ取材行はミュンヘン空港でドイツ入りした後に、東方100km弱の近郊都市、アメラングにあるEFA自動車歴史館(旧EFAドイツのクルマ歴史博物館)からスタート。5年ぶりに訪れたフィフテルベルク・ドイツ自動車博物館はメインの展示ホールが大幅にリニューアルし、新しい展示ホールもオープンしていました。

初めて訪れたメルクス自動車博物館、ウォルフェッグ自動車博物館、シュテイム自動車コレクションでは、これが初対面のクルマも数多かったのですが、ここまでF1GPマシンは、シュテイム自動車コレクションに展示されていた2005年のトヨタTF105が1台きり。ドイツのマイナーなクルマたちが多く、もちろんそれはそれで十分に楽しめたのですが、華がないなぁと贅沢な悩みを抱え始めることに……。

そんな想いを吹き飛ばしてくれたのが、13年ぶりに訪れたジンスハイム交通技術博物館でした。以前に訪れたときにも20台近いF1GPマシンが展示されていたことは覚えていたのですが、今回は展示車両の台数が増えていただけでなく、展示スタイルを一新。別館のメイン展示としてフロア中央に立体的なスタイルの展示を展開していました。

展示車両も1950年代の現行F1GP黎明期に活躍したマセラティ250Fの1956年型や1972年のBRM P160、1978年のコパスカー・フィッティパルディ F5Aなど旧い時代のF1GPマシンが新たに登場。また以前から展示されていた1976年のティレルP34は、タイヤも取り外した状態でより立体的な展示とされ、前後のサスペンション、とくに小径のフロント4輪を連携させたサスペンション・システムの仕組みが、より分かりやすくなるよう工夫されていたのが印象的です。

新しいところでは1989年のマクラーレンMP4/5や1992年のダラーラ-BMS192、1994年のザウバーC13、1995年のベネトンB195、1996年のウィリアムズFW18、1997年のマクラーレンMP4-12、そして1998年のザウバーC17と2000年のザウバーC19、さらには2001年のウィリアムズFW23や2002年のジョーダンEJ12、同年のザウバーC21といった具合に、1980年代の終わりから2000年代初めにかけての収蔵車両が充実しています。なによりも、天からウィリアムズFW18に続いてウィリアムズFW18 、ジョーダン196が駆け下りてくる展示スタイルに圧倒されてしまいました。

さまざまなF1GPマシンと遭遇

ジンスハイム交通技術博物館で、リニューアルによって誕生したF1GPマシンが大集合の展示スタイルに感動した反動、というわけでもないのですが、その姉妹博物館であるシュパイヤー自動車博物館では、ある意味、期待を裏切られることになりました。

誤解ないよう付け加えるなら、クルマ……ロードカーと消防車などの「働くクルマ」の収蔵展示は充実しているのですが、ことF1GPマシンに関しては台数が少なく、実際に展示されているのは2001年のザウバーC20が1台のみでした。ということでF1GPマシンは見たいけどロードカーや「働くクルマ」には興味がない、という向きには、21ユーロ(本稿執筆時点での邦貨換算で約4870円)の入館料は高すぎてお薦めできません。もっとも、ザウバーが展示されているのは入場ゲートの手前なので、駐車料金5ユーロ(同じく約786円)を払ってザウバーをじっくり観察、参考書籍やお土産を手に入れて立ち去る、というのはありかもしれません。

それはともかく、シュパイヤー自動車博物館の後も、F1GPマシンとは縁のない自動車博物館詣が続きました。しかし週末のヒストリックカーによる一大イベント、クラシックデイズの中日に出かけたケルンでは、ドイツ・トヨタコレクションやトヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパのコレクション、さらにはモーターワールド・ケルン内にあるミハエル・シューマッハ・プライベート・コレクションで様々なF1GPマシンと遭遇。濃密な1日でした。

トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパのコレクションでは、テストカーに終わった2001年のトヨタTF101も含めて、2002年のTF102から2009年のTF109、そして活動休止により実戦参加の叶わなかった2010年のTF110まで、同社のF1GPチャレンジで戦った歴代マシンが勢揃いした様には大きな感動を覚えてしまいました。

毎月第1土曜日に無料で一般開放されるドイツ・トヨタコレクションとは異なり、そのお隣にあるトヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパのコレクションは、適宜、要事前予約で有料のガイドツアーを行っていて、そのツアーで今回の取材と同じコースを回れるのかは不明ですが、ケルンに出かけるなら要チェックです。

ニュルブルクリンクでは半世紀近い時を経てアロウズA2とご対面

またミハエル・シューマッハ・プライベート・コレクションではF1GPマシンだけでなくグループCカーのメルセデス・ベンツ(ザウバー)C291や、F3のレイナード893・VW、さらにはフォーミュラ・フォードやレーシングカートまで、彼がドライブしたありとあらゆるレーシングカーが展示されていて、しかも入場無料。シューマッハの熱狂的ファンならずとも一見の価値あり。

そして今回の取材行の最後を飾った(正確には、週明けに最後の博物館を訪ねていますが)博物館がニュルブルクリンクサーキットで行われたオールドタイマーGPの際に訪れたリンク・ヴェルク(ニュルブルクリンク博物館)でした。ニュルブルクリンクと言えば24時間レースに代表される「ハコ車」レースの印象が強いのですが、ドイツGPのホストコースとしても知られています。

実際、初めてニュルブルクリンクを訪れたのは1975年の西ドイツ・グランプリで、まだノルドシュライフェが舞台でした。そのサーキット博物館ともいうべきリンク・ヴェルクでは4台のF1GPマシンが展示されていました。2台のBMWザウバー(サスペンションの形状から2005年のシーズンオフにBMWエンジンに載せ替えてテスト車として使用されたザウバーC24と思われるが詳細不明)に加えて1987年のザクスピード871と1979年のアロウズA2の姿もありました。

ザクスピードの方はこれまでに何度も出会っていますが、アロウズの方はこれが初対面。まだ学生だった頃、ライバルと一線を画すデザインに驚き憧れた記憶が鮮明に蘇ってきました。

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