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高速道路上でエンジンから煙が…。NEXCOの優しさが身に沁みた夜、ゴニョン(仮称)はドナドナされていきました【週刊チンクエチェントVol.18】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: 嶋田智之

NEXCOの対応に救われる……

まずは高速道路の緊急ダイヤル「♯9910」に連絡をして、故障で路肩にクルマを停めてることを伝える。驚いたことに「フィアットの方ですね。こちらでも確認できています」と。どこかに隠しカメラでもあるのか? 「今、NEXCOの緊急車両が向かってますので、三角表示板を出して、運転手さんはガードレールの外側で待っていてください」と指示される。「わかりました。御迷惑をお掛けします」と答えて電話を切った……。

状況報告のために深津さんに電話を入れる。ちょうどそろそろ帰宅どきでパンダに乗って帰ろうとしていたタイミングだったにも関わらず、積載車と診てもらうスペシャリストの手配を請け負ってくれ、さらにはパンダで迎えに来てくれることになった。

NEXCOの緊急車両がわりと早いタイミングで到着し、赤いカラーコーンをクルマの後方20mぐらいのところに置いてガードしてくれた。さらにビニールで包まれた何かを手渡してくれたので「何っすか、これ……?」と問うと、「蛍光ベストです。危ないのでそれを着用してガードレールの外側にいてください」という。「わかりました。で、どうやって返却すればいいですか?」と問うと、「返却は不要です。こうしたトラブルに遭われた場合、差し上げるようにしてるので」と返ってきた。やるじゃん、NEXCO。というか、対応してくださったNEXCOの皆さん、とっても温かかったのだ。高速道路の料金って安くないと思ってたけど、こういうことがあるとすんなり納得できてしまう。

九州にはアバルト595モメントで行くことに

そして待つこと1時間半近く。まず、深津さんがパンダで到着。さほど遅れることなく積載車も到着。もはや完全に陽が落ちた新名神の路肩でゴニョン(仮称)を積んでもらい、僕は深津さんのパンダに乗せてもらい、ゴニョン(仮称)は工場へ運ばれていき、僕は名古屋まで連れ帰ってもらうことになった。

あ。今夜、寝るところがないじゃん……。iPhoneの「じゃらん」アプリで博物館からそう遠くない金山のビジネスホテルを予約する。今度はたいして高級じゃないフツーのビジホが見つかった。あとは僕がどうやって熊本まで行くか、だ。

「深津さん、機材車のハイエースに僕も積んでいってもらう余地ってあります?」

「それがダメなんですよぉ。座席はすでに5人フル乗車だし、その後ろは機材満載ですから」

「ですよねぇ……」

「まぁウチ(博物館)にはいつも何かしらあまってるクルマがありますから、それを使ってもらうことになると思いますよ。明日、博物館で引き渡しますから。まだ何になるかわからないけど」

「ありがとうございます。それにしてもゴニョン(仮称)、どこが壊れちゃったんですかねぇ……? iPhoneの懐中電灯アプリ、ないよりはマシだけど、暗くてまったく役に立たなかったし」

「ひと目見てここじゃどうにもできないと思ったから、早く積み込んであそこから退去することだけ考えて、僕はあんまり見てないんですよ。でも、どこかオイルまわりの部品であることは間違いないでしょうね」

翌日の昼前に博物館に再びお邪魔することにして、金山のホテルに入る。1泊分の時間をここで消化しちゃったわけだから、岩国のホテルはキャンセルして、翌日は博物館から神戸のおふくろ宅まで、そしてイベント前日は神戸から一気に熊本を目指すことに決めた。

ふと時計を見ると、30分10本勝負みたいな感じになりそうだけど、大好きな『風来坊』の手羽先とビールで夕飯を済ますことができそうだったから、速攻で向かう。いや……美味い。この手羽先のおかげで明日も生きていける。そんなふうに感じたものだ。ビックリはしたけどとりたてて大きなショックを受けてたわけでもないが、こういうときの手羽先にビールは心に沁みる。

翌日、博物館に行ってみると、僕が単独で熊本に向かうための車両は、アバルト595モメントというその2ヶ月前に80台限定で発売された貴重といえる1台だった。積算計をチェックすると、まだナラシすら終わってない段階だった。595コンペティツィオーネに機械式LSDを組み込んだようなモデルで、間違いなく走るのが楽しいクルマだ。

何やかやとやってるうちに昼メシの時間になって、伊藤さんと深津さんが山本屋総本家に連れていってくれた。味噌煮込みうどん、最高に美味だった。前の日のあんかけパスタ、夜の手羽先、そして山本屋総本家の味噌煮込みうどん。この3つの名古屋メシのおかげで、僕は595モメントに乗って楽々と熊本・阿蘇へと向かい、元気よくトークの仕事をこなすことができた。関門海峡の写真とクラシック・チンクエチェントが並んでる写真は、その証拠である。

 ■協力:チンクエチェント博物館

■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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