世界初の量産ハイブリッド車、プリウス初代前期にもう乗れなくなる?
2023年9月4日、初代「プリウス」前期型(NHW10型)を愛用する筆者のもとに、トヨタから1枚のお手紙が届いた。裏面を見ると、「ご愛用車に関する重要なお知らせです。必ず内容をご確認ください」とある。「いまさら、リコールか?」数年前にもリコールの案内が届いたことがある。20年近く昔に製造されたクルマのリコールだなんて、ずいぶんと責任感があるものだ……と思った。「今度はどこだろう?」と封を開けると、衝撃の内容だった。いや、いつかはこの日が来ると思って覚悟していたけれど……。
バッテリーの無償交換キャンペーンへの対応が2024年3月末で終了
初代プリウスのHVバッテリーに関するサービスキャンペーンへの対応で、バッテリーの充電状況によっては交換を行っていたが、それが令和6年(2024年)3月31日で終了するという内容だった。ちなみに、一部では「永久保証が終了する」といった情報が流れているが、「永久保証」は都市伝説から生まれた言葉であって、トヨタ自動車は一切使用していない。あくまでメーカーの良心によるサービスキャンペーンへの対応であり、無償交換は事実だが永久に無償交換を保証するものではないのだ。
サービスキャンペーンの内容はHVバッテリーの無料点検。点検といっても、たいていHVバッテリー交換を告げられる。出力制限警告灯、いわゆる「亀マーク」が頻繁に出るようになったらディーラーへ入庫すれば、無料でHVバッテリー交換を受けられた。なお、筆者は約15年前に中古で購入して、3度のバッテリー交換をしている。もちろん無料だった。
「市販された試作車」といえるほど信頼性が低かった初代前期
このバッテリー無償交換を受けられるのは、初代といっても、その前期型のみ。バンパーにプラスチックのモールが入ったNHW10型だけだ。マイナーチェンジ後のNHW11型は対象にならない。
NHW10型は、その後のプリウスと異なり信頼性が低いのは事実。急激な加減速を繰り返したり、長期間乗らずに放置すると「亀マーク」が出てきて、通常使用に差し支えるほど性能が低下してしまう。なお、この「亀マーク」は3代目プリウスから廃止された。進化によって信頼性が向上したことが窺える。
今後、初代プリウスに乗り続けられる可能性は?
なお、サービスキャンペーンへの対応が終了する理由はHVバッテリーの部品供給の継続が困難になったことと記されている。現時点で、今後も有償なら交換を受け付けてくれるか不明だが、望みは薄いだろう。
一部では「トヨタはユーザーを見放すのか」といった辛辣な意見もあるが、HVだからと切り捨てたわけではない。ガソリン車であっても製造から一定期間を過ぎれば部品の補給は打ち切られ、エンジンを制御するコンピュータや、それこそテールコンビネーションランプの部品供給が終われば、乗り続けることはできないのだ。
当たり前のように、数えきれないほど多くのハイブリッドカーが行き交う現在の路上。この今の世の中は、世界初の量産ハイブリッドカーである初代プリウスがなければ存在していない。約25年前に生まれたクルマの部品を供給し続け、それもサービスキャンペーンへの対応として無償でバッテリー交換を行ってくれたのは、トヨタのハイブリッドカーに対する、ただならぬ思いであると感じている。
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と、物分りのいいフリをしつつ、初代プリウスオーナーとしては困った問題だ。オブジェとして飾っておくか、それともガソリンエンジンに載せ替えるか……いや、初代プリウス用の性能のいいバッテリーと制御コンピュータが開発されて、交換したら燃費が倍になったりしたら素敵だなと。