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元キース・リチャーズの「ディーノ246GT」が約6300万円で落札!「誰」がオーナーだったかも大切な要素です

元キース・リチャーズの「ディーノ246GT」が約6300万円で落札!「誰」がオーナーだったかも大切な要素です

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

元キース・リチャーズの愛車という付加価値は、落札価格にも反映される?

今回「Monterey 2023」オークションに出品されたシャシーナンバー#03354は、246GTの最終的かつ最もメカニカルな進化を遂げた「Eシリーズ」モデル。2.4L V6エンジンは最高出力195psを発生し、5速ギアボックスが組み合わされた。

1972年2月10日にラインオフした#03354は、新車時代から「アルジェント・メタリッツァート(シルバーメタリック)」のボディに、「ネロ(黒)」のコノリーレザーで仕上げられた。またアメリカ仕様として生産されたことから、ヴェリア・ボレッティ社製メーターがマイル表示となっているのが特徴である。

フェラーリの世界的権威であるマルセル・マッシーニ氏が管理するレポートによると、このディーノ246GTは当初、ミシガン州のさる工業会社に販売されたものの、実際には1972年6月にビル・ハラーの「モダン・クラシック・モーターズ」を介してカリフォルニア州に納車。初代オーナーは、キース・リチャーズその人であった。

リチャーズは1975年にディーノを母国イギリスに送り、「GYL 157N」というプレートで登録。そののち、彼はヨーロッパ・ツアー中の個人的な移動手段としてこのディーノを使用したとされる。そしてリチャーズは、その後の10年間で2万5000マイル(約4万km)以上の走行距離と、かつては素行の悪さでも知られた彼らしい、少なからぬ数のエピソードを積み重ねたと言われている。

じつは一時期、日本にあった!

また、ローリング・ストーンズの元ツアーマネージャー、アラン・ダンから1986年4月25日付で送付された手紙のコピーが現在でも保管されており、リチャーズが最初に購入し、所有権を得たこと、日本のプライベートコレクションに売却された際の走行距離(2万5122マイル)などが確認できる。

日本国内では、2009年の「BP東京ノスタルジックカーショー」などに展示されたことなどが確認されているが、その後2014年にヨーロッパに戻されたディーノは別の有名ミュージシャン、イギリスのEDMバンド「ザ・プロディジー」共同創設者であるリアム・ハウレットが手に入れることになった。

ハウレットは購入直後に、ロンドンの著名なフェラーリ・スペシャリストに依頼して、6万ポンド(当時レートで約1000万円)をかけてV6エンジンをリビルド。さらにその後2人のオーナーのもとに渡っても入念なメンテナンスは欠かさず行われてきたようで、RMオークション北米本社の公式カタログ作成時、オドメーターに刻まれた走行距離は3万37マイル(約4万8000km)にのぼりながらも、1972年にリチャーズが新車で手に入れた時とほぼ同じ姿を現在に伝えている。

そして注目の落札結果だが、40万ドル~50万ドルに設定されたエスティメート(推定落札価格)に対して、今年に入ってからの246GTとしては比較的高価な43万4000ドル。日本円に換算すると約6300万円で、小槌が落とされることになったのだ。

ここ1~2年のディーノGTのマーケット相場は、たとえば206GTや最終期のアメリカ仕様246GTSに設定されたオプション仕様車「チェア&フレア」のような超希少モデル以外では落ち着いた傾向もあるようだが、やはりキース・リチャーズのような超大物がファーストオーナーであることが判っている個体であれば、格別の評価を受けるのは当然のことなのかもしれない。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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