ルート66の歴史を知れば旅がさらに楽しくなる
広大なアメリカを東西2347マイル(3755km)にわたって結ぶ旧国道「ルート66」をこれまで5回往復した経験をもつ筆者が、ルート66の魅力を紹介しながらバーチャル・トリップへご案内。シカゴを出発して西に向かい、イリノイ州からミズーリ州へ、そして少しだけカンザス州を通り、ルート66でもっとも距離の長いオクラホマ州へやって来ました。今回はぜひ立ち寄りたいミュージアムを案内します。
中西部から西海岸の楽園を目指す道だった
約21kmとごく短いカンザス州を抜けると、ルート66はオクラホマ州に入る。ジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』(1939年)はオクラホマ州に住む主人公トム・ジョードが、ダストボウルと呼ばれる砂嵐で農業をあきらめざるを得なくなり、ルート66を辿りつつ一家でカリフォルニアを目指す逃亡の物語だ。
その内容が示すとおりオクラホマ州の代名詞といえるのが竜巻や砂嵐で、私もフリーウェイを東に向けて走っていたときに遭遇したことがある。大型のトレーラーが次々にレストエリア(日本の高速道路にあるサービスエリア的な施設)に入るので、何ごとかと思ったら進行方向にニュースで見るような竜巻が。スマートフォンに届いたアラートを確認すると、どうやら現在地をモロに通過することはなさそう。しばらくレストエリアで竜巻の行方を眺めつつ休憩し、トレーラーたちが動き始めたタイミングで旅を再開した。
脱線してしまったがルート66はオクラホマ州で暮らすことをあきらめ、パラダイスと信じたカリフォルニアで再興を期す逃亡の道でもあったのだ。
その1 クルマから農具まで見られるナショナル・ルート66ミュージアム
当時の世相を知りたい人にオススメなのが、オクラホマ州にある3つのミュージアム。まずは国立という意味を持つ「ナショナル」が冠せられた、エルク・シティの「ナショナル・ルート66ミュージアム」を訪ねてみよう。テーマの異なるいくつかの建物が集合しており、ルート66の旅を擬似体験できるほか、当時の交通、農業や一般家庭についての資料も豊富で興味深い。
ここの「ファーム&ランチミュージアム」に展示されていた、カタカナで「トウレンチ」と書かれたモンキーレンチ。聞いたことのないメーカーでインターネットでも情報は皆無だが、こんな場所で日本製の工具に出会えるとは思っていなかった。
なおナショナル・ルート66ミュージアムの看板は、全線でもっとも大きいというもっぱらのウワサ。私は残念なことにまだ目にしていないが、夜はネオンでライトアップされるらしいので、次回は近くに泊まって撮影するのが目標だ。
その2 クルマやバイクが豊富なオクラホマ・ルート66ミュージアム
そこから約30分の距離にあるのが、「オクラホマ・ルート66ミュージアム」。敷地の広さこそエルクシティのミュージアムには及ばないものの、中身の濃さは負けていないので時間があれば両方とも立ち寄るべき。ルート66の歴史を追うカタチの展示は実物のクルマやバイク、また写真パネルが多用され英語が不得意でも分かりやすい。
映画でよく見るアメリカのダイナーを再現したコーナーや、ヒッピー・カルチャーの象徴ともいえるVWバスなど、ルート66に限らず近代アメリカを知るには最高の施設だ。
その3 映像プログラムで学べるルート66インタープリティブ・センター
他のふたつに比較するとマイナーかもしれないが、チャンドラーの「ルート66インタープリティブ・センター」もオススメ。1930年代の建物をリノベーションしたそうで、オープンは2007年とそこそこ新しい。
公式サイトで「エルク・シティとクリントンのミュージアムを補完し、さらにひとつ進んだ場所を作った」とうたうだけあり、一番の特長は映像による展示が非常に豊富なこと。ルート66が創設された直後の逃亡の道だった時代からスタートし、アメリカの経済的な発展に寄与した時代を経て現在に至るまでを、いくつものショート・ムービーで擬似体験することができる。
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ルート66が通過する8州のなかでもっとも距離が長く、見どころも数え切れないほど多いオクラホマ州。より深くルート66を知りたいなら、3カ所のミュージアムは必見だ。
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